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本田秀夫「子どものココロ」

コラム

精神医療の関わりを要するのは10人に1人以上 無理なストレスから子どもを守ろう

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 信州大学子どものこころの発達医学教室の本田秀夫です。この連載では、私たち児童精神科医が出会うことの多い、子どものこころの問題についてご紹介し、皆さんとともに考えていきたいと思います。

イラスト:高橋まや

生涯健康的であるためには、子ども時代に「よい体験」を

 最近は精神科・心療内科などのクリニックも増え、こころの問題で医療機関を受診することが、珍しいことではなくなってきました。とはいえ、わが子がこころの問題で病院やクリニックに行くとなると、抵抗感を覚える人がいるかもしれません。

 実は、精神医学の知識のある専門家が、何らかの形で関与する必要があると思われる子どもは、全体の1割を下らないと推定されています。いま、「関与」という言葉を使いましたが、この中には、カウンセリングや薬物治療など狭い意味の医療だけでなく、児童福祉、保育、教育などへの間接的な支援、育児全般の中で子どもがこころの健康を維持できるための活動(講演、書籍やインターネットでの発信など)も含まれます。

 身体の医療では、かかってしまった病気の治療だけでなく、病気を予防する「保健」の考え方が広く普及しています。精神科医療にも「精神保健/メンタルヘルス」という言葉がありますが、身体の保健ほどには浸透していないように思います。生涯を通してこころが健康的であるためには、「子どもの時期によい体験をたくさん得られること」や「無理なストレスから子どもたちを守ること」が、とても大切です。

 とくに、家庭、保育園、幼稚園、学校などの生活の場は、子どもたちのこころに大きな影響を及ぼします。そこで、これらの生活の場におけるこころの健康を守る「母子メンタルヘルス」や「学校精神保健」などの領域でも、児童精神科医が役割を果たすことが求められています。

原因は「脳の機能」「体験による心理的影響」など

 さて、子どものこころの問題は、想定される原因によって大きく3種類に分けられます。

 一つめは、こころの働きをつかさどる脳の機能に何らかの問題がある場合です。先天性の場合と脳外傷などによる後天性の場合があり、一般に前者は「神経発達症」、後者は「高次脳機能障害」と呼ばれます。神経発達症は、児童精神科医が関わる中で最も大きな割合を占め、わが国の法律の「知的障害」と「発達障害」の大半がここに含まれます。医学的検査によって脳の異常が見つかる場合もあれば、さまざまな状況証拠から脳の機能の問題である可能性が高いものの、具体的な異常がまだ特定できていない場合もあります。

 二つめは、先天性の脳機能の問題や物理的な脳外傷ではなく、生活の中で体験したことによる心理的影響によってこころの問題が生じる場合です。乳幼児期のこころの発達にとって重要な母子のアタッチメント(愛着)がうまく形成されないと、対人関係や情緒が不安定になることがあります。また、災害、事故、事件などでこころに傷を負うと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が残ることがあります。災害のような衝撃的な体験以外にも、虐待やいじめなどの心理的ストレスが長く続くことによって、情緒発達や社会性の発達に深刻な影響を及ぼすことが指摘されています。これらの体験は、不登校、家庭内暴力、非行、自殺などの思春期前後にしばしばみられる現象にも影響します。

 三つめは、通常は青年期以降に生じることの多い精神疾患が、子どもの時期に早期発症する場合です。統合失調症、うつ病、双極性障害(そううつ病)などは、思春期前後に発症することがあります。また、女性に多い神経性やせ症は、小学校高学年~中学生で発症することがあります。

 次回からは、子どものこころに起きている、こうした様々な問題について、具体的にお話ししていきます。(本田秀夫 精神科医)

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本田秀夫(ほんだ・ひでお)
1964年、大阪府豊中市生まれ。精神科医。信州大医学部付属病院子どものこころ診療部部長。同学部子どものこころの発達医学教室教授。日本自閉症協会理事。著書に「自閉症スペクトラム」など。

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