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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

コラム

子どもに「食の成功体験」を

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子どもに「食の成功体験」を

旅行先の岩手県遠野市で手こぎポンプの井戸を発見。娘たちは初めて「呼び水」を投入し、自力で水をくみ上げて大喜びでした

 我が家の小学生の娘たちは、朝ごはんをしっかり食べてから家を出ます。働く母親にとって、朝の忙しい時間にバランスの良い朝ごはんを用意するのは大変なことです。私も朝は時間との闘いです。朝食はトーストやバターロールに、卵料理やウインナーなどのたんぱく源となる食品、それに必ず果物を添えています。サラダも味噌汁も作りません。じっくり料理している時間がないからです。そのかわり、夕飯は野菜たっぷりのメニューを心掛けています。近年、「しっかりと朝ごはんを食べてから登校しよう」という呼びかけは、小中学生の食育として浸透してきているのではないでしょうか。

 小学校の夏休みの宿題やPTAの行事などでも、「食育の推進」のためにいろいろな取り組みが行われていますが、「管理栄養士ママ」としては、「その食育で、子どもたちは健康な大人になれるのだろうか」と疑問に思うことがあります。

「思い出」だけでは健康になれない

 今年の夏休み、食育として「カレーライスを作ろう」という課題が宿題として出ました。小学4年生の長女は、慣れない包丁で野菜を切って、具材をお鍋でコトコトと煮込み、初めてのカレーを作りました。娘は「自分で作るとおいしいね」と言っていましたが、「じゃあ、次から作ってくれる?」と聞くと、「それは大変だから、やらない」とのことでした。

 「栄養バランスの良いカレーとは」などの栄養的な学びを深めることができれば、将来、カレー屋さんでの「健康的なトッピングの選択」に役立つかもしれません。でも、夏休みのカレー作りは「楽しい思い出」で終わってしまいました。私は、「健康的な食習慣」を身に付けるためには、「思い出」だけでは不十分だと思っています。人生のどんなステージにおいても、たとえ食費が限られていても、健康を維持するための「食の知恵」を食生活の中に取り入れ、実践できるようにするためには、毎日の積み重ねが大切です。今のところ、「小学生の食育」が学校まかせの一時的なものになってしまっているように感じています。

 国を挙げて「第1次食育推進基本計画」が始まったのは平成18年です。それから12年。現在は第3次食育推進基本計画が進められていますが、いまだに大きな成果が表れていないのが問題になっています。開始当初は「朝食を欠食する国民の割合の減少」を掲げて始まったのに、「朝食を欠食する子どもの割合」は減るどころか少しずつ増えてしまっているのです。

(農林水産省「平成29年度食育白書」より)
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/attach/pdf/h29_wpaper-25.pdf

便秘で悩む娘に「対策メニュー」

 ある朝、娘が深刻な面持ちでこう言いました。「わたしね、なんだか便秘みたいなの。2日も出ていないの。おなかも張っている感じで苦しい」と。確かに下腹部は少しぽっこりとして張っているように見えます。悲しげな娘の表情を晴らしたいと、「今夜、ママに任せて!」とあえて明るく学校に送り出しました。

 その日の夕食は、食物繊維と油脂をしっかり取れるように「便秘対策メニュー」を献立として考えました。野菜たっぷりの春巻き、切り干し大根のサラダ、ナメコ汁です。便秘に効果的な食材を集めただけでなく、娘の大好物ばかりです。食卓に並んだ料理を前に「これで明日の朝は大丈夫だよ」と自信満々の私でしたが、内心は「これでもダメなら下剤を使うしかないかしら」と思っていました。

 そして、翌朝。娘が笑顔で報告してくれました。

「ママ、すっきり出たよ!」

 私は、内心ほっとしながら、「そりゃそうだよ。おなかスッキリメニューにしたからね」と話しました。

 今回は「便秘」でしたが、体調によっては「下痢」や「食欲不振」の日もあるでしょう。そんなとき、どんな「食の知恵」で乗り切ればよいのか、食育で「カレーライス」を作るだけでは不十分です。また、体調を整えるのは「健康のため」だけではありません。「今度の試合で最高のパフォーマンスができる食事」「1週間後の面接で健康的な自分をアピールできる食事」など、何かを達成するために体を整える食事も、自分で選択していかなければなりません。

 そのためには、子どもの頃から「食の成功体験」を積んでいくことが大切だと思います。私の場合は、中学生の頃にニキビに悩まされましたが、皮膚科の先生に「チョコレートやクッキーなどの洋菓子を食べるのを我慢してみなさい。どうしても甘いものが食べたかったら、和菓子を少しだけ」と言われ、すぐに実践したところ、しばらくしてから肌の調子が改善した経験があります。これは「お肌と食の成功体験」ですね。

 体調に合わせてバランスよく食事を取ることができるよう、大人も子どもも「食の成功体験」を通して学んでいく必要があるのではないでしょうか。(在宅訪問管理栄養士 塩野崎淳子)

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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