解説
もっと知りたい認知症
認知症予防(7) アロマで嗅神経刺激
このシリーズでは、日本認知症予防学会理事長の浦上克哉・鳥取大教授に聞きます。(聞き手・諏訪智史)
これまで生活習慣を中心に認知症に対する対策を紹介してきました。今回は、鳥取大で私たちが行っているアロマセラピーの研究を紹介したいと思います。
認知症の中で最も多いアルツハイマー病では、もの忘れよりも前に、においが分からなくなることがあります。これは、においを感じる脳の 嗅 神経が、早い段階でダメージを受けてしまうためと考えられます。においが分からなくなる前に嗅神経を刺激すれば予防につながるかもしれない――と考え、認知症の高齢者を対象にアロマセラピーを28日間続ける臨床研究を行いました。
その結果、特に初期の患者で認知機能の一部が改善する効果がみられました。アロマはリラックス効果だけではなく、脳の神経に直接作用し、認知機能を回復させる効果も持つ可能性が示されたと思っています。
様々な香りを試すうちに、昼は「ローズマリー・カンファー」と「レモン」を2対1の割合、夜は「真正ラベンダー」と「スイートオレンジ」を2対1の割合で配合するのが最も効果が高いという結果が出ました。昼間は集中力の向上、夜間は不安やストレスの緩和につながると期待され、昼は2時間以上、夜は就寝前に使うのがお勧めです。
オイルは、無農薬・有機栽培で育てた植物から抽出されたものを使うとよいでしょう。
全ての人に効果があるというわけではありませんが、アロマセラピーは普段の生活に取り入れやすいと思います。興味のある方は一度試してみてはいかがでしょうか。
【略歴】
浦上 克哉(うらかみ かつや)
1983年、鳥取大学医学部卒。同大学助手、講師を経て、2001年から教授。大学病院などに「もの忘れ外来」を設け、認知症の早期発見と予防に取り組む。日本認知症予防学会理事長。著書に「認知症&もの忘れはこれで9割防げる!」(三笠書房)などがある。
【関連記事】