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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

コラム

インフルエンザ予防は誤解だらけ 最大最強の方法はもちろん……

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インフルエンザ予防は誤解だらけ 最大最強の方法はもちろん……

 あんなに暑かった夏も気がつけば終わり、だんだん肌寒くなってきましたね。そう、明けない夜はなく、終わらない辛苦もないのです。つらい大学教員生活に耐えるために、いつも自分に言い聞かせています。

 それはともかく、涼しくなってくると、今度は「寒いときの病気」が心配になります。冬に流行する感染症といえば、何と言ってもインフルエンザ。では皆さん、インフルエンザの予防、ちゃんとしていますか?

定番の手洗い、うがい、マスク 効果はほとんどなし

 実は、インフルエンザの予防に確実と言われる方法は、そんなにたくさんないのです。例えば、よく言われる「手洗い、うがい」。少なくとも通常の手洗いやうがいには、インフルエンザを予防する効果はほとんどないと考えられています。ま、手洗いをすると他の病気の予防には役に立ちますし、うがいも別に無害ですから、「やるな」とは申しませんけど。

 あと、マスク。日本人はマスクが大好きですが、あいにくマスクを着けてもインフルエンザにかかりにくくなるというデータはほとんどありません。病院の中など、特殊な環境下ではある程度役に立ちますが、普通の日常生活においてはマスクの効果は極めて限定的です。

 さらに、学校閉鎖や学級閉鎖。インフルエンザが流行するとよく行われますが、実はインフルエンザの流行を鎮める効果は学問的には証明されていません。おそらく(仮にあったとしても)大した効果はないと思います。

確実に効果あるワクチン 「打ったのにかかった」の経験談にご用心

 しかし、インフルエンザ予防にほぼ確実に効果がある方法が、あるのですよ。それは、ワクチン。なーんだ。当たり前過ぎますか? でも、インフルエンザワクチンが「効かない」と思っている人は案外多いのです。ここだけの話、医師や看護師でも「インフルエンザワクチン、効かないんじゃないの?」と思っている人は、いるのです。

 その理由が、「私、ワクチン打った年に、インフルになりましたよ」とか、「私はワクチン一度も打ったことないですけど、インフルエンザになったことありませんよ」といった経験談です。

 さて、皆さん。経験談にはご用心です。経験談は人をすぐにだまくらかすからです。確かに、ワクチンを打ってもインフルになる人はいますし、ワクチンを打たなくてもインフルにならない人もいます。しかし、そのような「個人の経験」レベルではなく、たくさんの人を集めてデータを取ると、ワクチンを打ったほうが打たないよりも、確実にインフルエンザにはなりにくいのです。それも、毎年。

 よく、ワクチンが効いた年とか、効かなかった年とかいうじゃないですか。確かに、年によってワクチンの効果にはバラツキがあります。しかし、これはアメリカのCDC(米疾病対策センター)という、えらーい役所のデータですけど、インフルエンザワクチンは毎年確実に効いているのです。効果は年によって違い、60%のこともあれば、30%程度のこともあります。

 えー、30%? 大したことないいじゃん。そう思われるかもしれません。しかし、考えてもみてください。リスクを3割も減らしてくれるというのは、とても効果がある予防法なんですよ。少なくとも学校閉鎖や学級閉鎖には、このような効果は(おそらく)ないのですから。

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岩田健太郎(いわた けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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2件 のコメント

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ワクチンが合わない人も含めたシステムを

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

僕は初期研修医の時に2年連続でインフルエンザワクチンで2週間の体調不良になることが判明したので以後接種してません。(それが偶然なのか他の要因なの...

僕は初期研修医の時に2年連続でインフルエンザワクチンで2週間の体調不良になることが判明したので以後接種してません。(それが偶然なのか他の要因なのかも鑑別に挙がりますが。)
2週間の業務での低出力はキャリアにも影響を与えます。
(そしてインフルエンザ発症は個人としては1週間弱の休養で済みます。)
労働力としての価値や上司の覚えは扱いやすい方が優位だからです。
一方でワクチンが有効であるという意見の中で打てない個人への配慮はどうなるでしょうか?
個人のための組織か、組織のための個人か、まるでサッカーの育成論のように答えのない話ですが、そのへんの話がないといじめに繋がりかねない問題になります。
HPVワクチンでも同様の議論がありますが「行政側からしたら千人や万人に一人の話でも患者やその家族からすれば一分の一である」という部分への配慮が大事です。

とはいえ、医療機関や医療人材がインフルエンザおよび鑑別すべき疾患の対応に追われすぎることも含めてワクチン医療、予防医療の意味は大きいと思います。
またタミフルの副作用の問題も踏まえて、副作用の解明やワクチンや治療薬の改善も大事になります。
分子標的薬学者のノーベル賞でも世間では過大な期待がニュースになりましたが、光も闇も含めて全体をより良い方向に動かさないといけないですね。

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マスクは

山茶花

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マスクは直接ウィルス感染を遮断することはできなくても、喉や鼻の粘膜の湿度と温度を保つことによってインフルエンザや一般の風邪に罹りにくくなると聞きましたが如何でしょう。

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