レスリング リオ五輪代表 渡利璃穏さん
一病息災
[レスリング リオ五輪代表 渡利璃穏さん]悪性リンパ腫(2)五輪前、母に病気伝える
所属企業アイシンAWで2016年4月に受けた健診で、胸の中央に腫瘍を思わせる影が見つかった。リオデジャネイロ五輪を2か月後に控えた同年6月に知らされ、練習場所の至学館大学がある愛知県内の病院でCT(コンピューター断層撮影法)など検査を受けた。血液腫瘍内科で告げられたのは「ホジキンリンパ腫」。耳慣れない病名に「何だそれ?」と当惑した。
悪性リンパ腫は、血液細胞のリンパ球ががん化する病気だ。がん細胞の性質によって70種類以上に分類され、大きくホジキンと非ホジキンに分かれる。
治療法は、がん細胞を採取して顕微鏡で調べ性質を見極めて決める。わきの下に穴を開け器具を挿入するが、鍛え上げた厚い筋肉を傷付けると痛みが強く残る危険があった。4月と比べ、腫瘍が縮小しているとして組織検査や治療は五輪後に延ばしたという。
「発熱とか症状が出たらどうしよう」。不安を抑え込んで、ほかの代表メンバーとともに練習に参加。幸い大きな不調は出なかった。
ただ、五輪前につらい宿題が残っていた。小学生の時から応援してくれた実家の母に病気を伝えること。「オリンピック出場で最高に喜んでいる時に悲しい知らせですから」。出身地の松江市で開かれた激励会が終わった夜、「胸に腫瘍が……」と切り出した。自分が告知された時よりも苦しかった。
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レスリング リオ五輪代表 渡利 璃穏 さん(27)
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