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スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

コラム

大谷、ダルビッシュも受けた「トミー・ジョン手術」って何?

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 どうも、大関です。最近、トミー・ジョン手術という言葉を耳にされたことのある方も多いのではないでしょうか。大リーグのダルビッシュ選手や大谷選手がこの手術を受けたことで、注目を集めました。今回は、その原因となる肘の 内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい) 損傷、そして野球の肘の問題についてお話しします。

 大学生・投手のケースです。

 大学1年生のL君は小学3年生で野球を始めました。ずっとピッチャーでしたが、小学校高学年の頃から、時々、肘の内側に痛みを感じていました。中学3年生の時には痛みが強くなっていましたが、チーム内にピッチャーは自分しかいないため、投げ続けていました。中学の部活を終え、高校入学までの間は投球を休み、痛みが少し楽になりました。高校時代は、痛みに波はあるものの、我慢して最後まで投げきりました。しかし、大学の試合で投げている時、肘の内側の痛みが増し、ついに肘の曲げ伸ばしもつらい状況となりました。病院では、内側側副靭帯の手術も治療の選択肢だと言われました。

投球を繰り返すことで過剰な負荷が…

 投球動作は下半身から体幹、そして腕へと伝達される全身の運動連鎖で成り立ちます(「 成長期に起きる野球肘 『治す』から『防ぐ』へ 」)。肘の内側には引っ張られる力が、肘の外側には圧迫される力が加わります(上図)。投球を繰り返すことで筋肉が疲労したり、バランスが悪くなったりして、股関節、体幹、胸郭などの機能が低下すると、それを肩や肘の力で補おうとします。すると、上腕骨と (しゃっ)(こつ) を連結する肘の内側側副靭帯(下図)に過剰な負荷がかかり、損傷が生じてきます。投球を休み、リハビリをすることで、痛みがない状態になることも多いのですが、損傷の程度によっては、手術をしないと復帰が難しいこともあります。そんな時に用いられるのが内側側副靭帯再建術、いわゆるトミー・ジョン手術です。

 呼び名にもなっているトミー・ジョンとは、かつて大リーグで活躍した投手です。損傷した肘の内側側副靭帯を作り直す手術を、1974年に初めて受けた選手です。執刀したのはフランク・W・ジョーブ博士で、当時は成功するかどうかもわからない、前例のない手術でした。手術を受けた後のトミー・ジョンは、約14年のシーズンで164勝をあげ、46歳で引退するまでに通算288勝を記録しました。手術の呼び名にドクターではなく、手術を受けた人の名前が付いているのは珍しいですね。

 手術は、まず肘より先の前腕にある 長掌筋(ちょうしょうきん) を採取します。これを、上腕骨と尺骨に作った (あな) の中に通し、両端を引っ張った状態で固定し、靭帯の代わりになるようにします(下図)。

 ただし、生まれつき長掌筋がない人もいます(全体の10~20%)。ない人の場合は、膝から (けん) を採取します。

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Ozeki-7-pro

大関信武(おおぜき のぶたけ)

整形外科医・博士(医学)
一般社団法人日本スポーツ医学検定機構代表理事

1976年大阪府生まれ、兵庫県立川西緑台高校卒業。
2002年滋賀医科大学を卒業。2014年横浜市立大学大学院修了。横浜市立大学付属病院、横浜南共済病院、関東学院大学ラグビー部チームドクター、英国アバディーン大学研究員などを経て、2015年より東京医科歯科大学再生医療研究センター所属。現在、東京医科歯科大学付属病院スポーツ医学診療センター、八王子スポーツ整形外科などで診療。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。野球、空手、ラグビーなどを通じて、野球肘、肩関節脱臼、足関節靱帯損傷、骨折(鼻骨、手首、下腿)など自身が豊富なケガの経験を持つ。スポーツのケガを減らしたいとの思いで、2015年12月一般社団法人日本スポーツ医学検定機構を設立し、「 スポーツ医学検定 」を開催している。

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