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団地再生~高島平の取り組み~(下)困り事対処に若者の力

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食を通じて多世代交流

団地再生~高島平の取り組み~(下)困り事対処に若者の力

岩崎さん(左)の家のエアコンを掃除する「御用聞き」の松岡さん。「手を動かしながらも、会話を大事にしている」と言い、暮らしのことや世間話に花を咲かせる(東京都板橋区の高島平団地で)

 東京都板橋区の高島平団地では、若者たちが、団地の活性化にひと役買っている。生活上の困り事の相談に乗ったり、多世代交流の場作りをしたり……。世代を超えた取り組みが住民の暮らしを支えている。

 10月中旬、団地で独り暮らしする岩崎良一さん(70)の家で、株式会社「御用聞き」の松岡健太さん(24)が、エアコンの掃除をしていた。「これで冬も大丈夫ですね」。松岡さんが声をかけると、「助かるねえ」と、岩崎さんはゆっくりとほほ笑んだ。

 「御用聞き」は、“5分100円のちょこっとお手伝い”のサービスを提供する家事代行会社。高島平団地を拠点に、電球の取り換えや重い荷物の移動など、高齢者の生活の困り事を解決している。都内の学生アルバイトら約120人が働いている。

 岩崎さんは独身で、母親を亡くしてから独り暮らし。昨秋、近くのコンビニエンスストアに買い物に出かける途中、横断歩道で転んで足を悪くした。自治体による介護保険の認定がおりるまでの期間、買い物などを頼んだのが、「御用聞き」を使い始めたきっかけだ。

 岩崎さんは、「ヘルパーに頼みづらい、細々としたことも依頼している。便利だし、若い人が来て話してくれるのもいいね」という。

 「御用聞き」は、社長の古市盛久さん(39)が2011年に始めた。古市さんはもともと不動産関係の仕事をしていたが、建物だけではなく、入居後の高齢者の生活を支えたいと考え、高齢者の買い物代行の事業に取り組んだ。高齢者のニーズを丁寧に聞き取るなかで、自立している高齢者でも、生活のなかでいろいろな困り事があることがわかったという。

 高島平団地の自治会が独自の生活支援サービスを展開していたことも参考になった。「助け合いの会」といい、自治会のメンバーが自治会員の困り事を解決するボランティア活動だ。

 だが、住民の高齢化にともなって自治会の加入者も減少し、担い手も高齢化。隙間を埋める新たなサービスが求められているという。古市さんは「高齢者の『生活のささくれ』をとりながら、互助の文化づくりをしていきたい」と力をこめる。

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住民ボランティアが作る食事を求めて、子どもから高齢者まで多世代が集う「地域リビングプラスワン」(高島平団地で)

 一方、団地の商店街の一角で、食を通じた多世代交流の場を提供しているのが、NPO法人ドリームタウンが運営する居場所「地域リビングプラスワン」だ。2013年にオープンし、昼は週4日ほど、ボランティアがつくるメニューを提供している。その他、英会話教室や「こども食堂」も展開している。

 担い手となっているのは、子育て中の母親や高齢者ら様々な住民。家族のような関係を育んでいる。

 代表理事の井上温子さん(34)は、地元、大東文化大の学生時代、授業を通して同団地を活性化させる地域活動に参加。以来、ずっと地域づくりに関わってきた。当初は無機質に感じられた団地も、住民の知り合いや友人ができると、「愛着のある色づいた町になった」という。

 井上さんは「多世代の出会いを通じ、住民が孤立しないだけではなく、暮らして楽しいと思える地域づくりをしたい」と話している。

都市の活力取り戻す試金石

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  東京通信大学の高橋紘士教授(地域居住論)=写真=の話

 急速な高齢化と建物の老朽化が進む団地は、日本の将来課題を先取りした地域だ。高島平団地などで、認知症の人も住み慣れた地域で暮らせる街づくりを進める都市再生機構の取り組みは、団地周辺も含めた都市の地域の再生のあり方を考えるうえで注目される。

 独り暮らしや家族に頼れない人が目立つなか、団地を生かした地域再生を図るには、かつての縁側に代わる“中間領域”としての居場所をつくり、互助の関係を強めていくことが大切だ。団地の集会室や公園などの空間をいかせるはずだ。

 居場所を運営するには、資金のバックアップや、様々な支え手を巻き込むコーディネーターも必要だ。これまでに築かれた自治会や住民活動などが役立つだろう。

 高島平団地のように自治会や住民が育んだ助け合いの文化があり、住民の愛着も強い団地には、再生を図れる十分な土壌がある。高島平の取り組みの行方は、都市の地域再生の試金石になるはずだ。

 (この連載は、社会保障部の粂文野が担当しました)

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