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僕、認知症です~丹野智文44歳のノート

医療・健康・介護のコラム

自分でいれたコーヒー 忘れて妻に「ありがとう」…でも、気にしない

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スケジュール管理の頼れる味方

 全国から講演の依頼を受けるようになり、宮城県内でも「おれんじドア」などの認知症関連の活動が増えるのにつれて、スケジュール管理が重要になってきました。

 覚えられないのですから、書いておくしかありません。自宅のリビングに大きなカレンダーを掛けて、予定を書き込んでいくようにしました。頻繁に目につくようにして、約束を忘れたり、日時を間違えたりするのを防いでいるのです。こうしておけば、万一、私が忘れてしまっても、家族が気づいて声をかけてくれます。

 認知症の人と家族の会宮城県支部の副代表の若生栄子さんにも、ずいぶん助けてもらっています。講演などの予定は全て若生さんに連絡して、情報を共有します。すると予定の前日に若生さんが「明日は何時にどこそこ」とLINEを送ってくれるのです。

 若生さんとは、地元では一緒に活動していますし、講演に同行してくれることも多いので、頻繁に顔を合わせています。小まめにお互いのスケジュール帳を付き合わせて、もれを防いでいます。

暮らしを助ける「三つのこと」で認知症になっても大丈夫

 外出先では、スマートフォンが大活躍です。例えば講演で県外に行く時は、ナビを頼りに会場に向かいます。宿泊先のホテルでも、集合時間の少し前にアラームをセットしておけば、相手を待たせる心配もありません。もちろん、本当に困ったときには、仲間や家族に連絡することもできます。認知症になる前からスマホを愛用してきましたが、今となっては、大げさでなく「これがなければ、生活が立ち行かない」と感じます。

 スマホやタブレットは簡単に文字を拡大できるので、視力の弱い人やお年寄りの助けにもなります。障害がある人や高齢者こそ、新しい機器が役に立つのです。デイサービスでWi-Fiがあるのは当たり前、レクの時間には、みんなで「スマホ・タブレットの使い方教室」--なんて時代が早く来るといいと思います。

 こうして振り返ってみると、(1)自分なりに工夫したうえで(2)周囲の理解とサポートを得て(3)新しい機器を活用する――という三つのことで、日々の暮らしがなんとかうまくいっているのが分かります。

 誰だって、年を取れば認知症になる可能性があります。もし認知症になっても、この三つがあれば大丈夫。一足先に認知症になった私から、これから認知症になるかもしれない皆さんに、そう伝えたいです。(丹野智文 おれんじドア実行委員会代表)

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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