大人の健康を考える「大人び」
医療・健康・介護のコラム
認知症予防(6) 質の良い睡眠が大事
このシリーズでは、日本認知症予防学会理事長の浦上克哉・鳥取大教授に聞きます。(聞き手・諏訪智史)
仕事や家事で疲れがたまり、頭がボーッとする状態になった経験は、誰にもあると思います。まめに休息し、気分転換することは脳にとっても重要です。
脳の休息にとって最も重要なのが睡眠です。最近、睡眠不足が、認知症のリスクになるという研究成果が盛んに発表されるようになってきました。きちんと寝ている人と、そうでない人とを比較すると、きちんと寝ていないグループの発症率が高いケースが報告されているためです。
認知症で最も多いアルツハイマー病では、「アミロイド β 」と呼ばれるたんぱく質が、脳内に少しずつ蓄積することが発症の一因と考えられています。詳しい仕組みはわかっていない点も多いのですが、動物実験の結果などからは、睡眠中にアミロイドβの分解が促進されるのではないかと考えられています。
逆に、あまりに長い時間、寝過ぎるのも良くないという報告もあります。睡眠時間よりも、いかにぐっすりと寝られるかという「質」が重要ということなのかもしれません。寝る前に、ぬるめのお風呂に入ったり、ストレッチしたりして、6~8時間の睡眠を確保するのが理想的でしょう。就寝前にカフェインやお酒を摂取するのは、眠りの質を低下させるので避けるべきです。
最近は、布団に入った後にもスマートフォンを操作し、友達とメッセージを交換したり動画を見たりする人が増えていますが、睡眠の質が低下し、将来的に認知症の発症につながらないかが心配です。若いうちから、良質な眠りを意識した生活を心がけましょう。
【略歴】
浦上 克哉(うらかみ かつや)
1983年、鳥取大学医学部卒。同大学助手、講師を経て、2001年から教授。大学病院などに「もの忘れ外来」を設け、認知症の早期発見と予防に取り組む。日本認知症予防学会理事長。著書に「認知症&もの忘れはこれで9割防げる!」(三笠書房)などがある。
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