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介護と仕事(下)会社か家族か だけじゃない

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再就職 自らテレワーク導入

介護と仕事(下)会社か家族か だけじゃない

介護離職の経験を生かし、働き方を見直した横澤さん。各地で講演し、テレワークの導入を呼びかけている(横浜市の向洋電機土木で)

 「介護か仕事か」ではなく、「介護も仕事も」――。そんな生き方を模索する人々の姿から、両立実現の工夫や知恵を探った。

 横浜市の会社員、横澤昌典さん(46)は、がんで胃を摘出した父親(72)を自宅で介護する。管で腸に栄養を入れる「腸ろう」も必要な父親を、同居の母親(72)と妻の3人で支える。

 父親を病院に連れて行く時や、体調が悪く見守りが必要な時も仕事は休まず、病院や自宅でパソコンを開いて業務をこなす。会社以外で働く「テレワーク」が認められているからだ。薬の受け取りなど、短時間の用事なら、職場を抜け出せる制度も活用している。

 こうした仕組みを会社の就業規則に取り入れたのは、横澤さん自身だ。勤務先の建設会社「向洋電機土木」(横浜市)は従業員約40人の中小企業で、横澤さんは広報部長を務める。遠距離介護の末、前の会社を辞めざるを得なかった苦い経験を生かした。「収入を得ながら介護を続けられることが大切だ」と力を込める。

 大手企業の浜松支店で働いていた2004年、父親の介護が始まった。横浜の実家と職場を車で6時間かけて往復した。有給休暇を使い果たし、介護休業の取得を人事部門にかけあったが、「前例がない」と認められなかった。「職場の理解も支援もなく、もう働くのは無理だ」と考え、05年に退職した。

 向洋電機土木に就職したのは07年。人づてに紹介された当時の社長から、「困っている君が働きやすければ社員も働きやすくなる」と誘われた。入社後、働き方の選択肢を増やす改革に取り組んだ。

 手始めに社会保険労務士などを講師に招き、介護や育児の休業制度の勉強会を開催。さらに業務は原則2人で担当するように改め、1人が急に休んでも困らないような体制にした。

 テレワークの導入で、社員が工事現場から直接帰宅できるようになった。会社も、残業代や車のガソリン代が減る利点があった。

 現在、同社には家族を介護する社員はいないが、横澤さんは「いずれは介護に直面する。我慢して仕事を頑張るか、辞めるか、二つの選択肢しかないのは、つらい。私と同じ苦労をしてほしくない」と話す。

 都内の男性会社員(39)は、十数人の部下を束ねる大手企業の管理職。電車で2時間離れた隣県の両親を介護する。普段は認知症の母親(77)を悪性リンパ腫を患う父親(79)が見守り、男性は週2日の平日夜と土曜に実家を訪ねる。「介護も仕事と同様に、どう効率的に進めるかがカギだ」と話す。

 工夫したのは携帯メールの活用。訪問介護のヘルパーに依頼し、「トイレットペーパーが切れた」「牛乳が足りない」など、ヘルパーが訪問して得た情報を男性にメールするようにした。男性は、スーパーで買い足してから実家に行く。「 せき が出ている」とのメールが届けば、母親の症状が悪化する前に病院に連れて行った。「メールが助けになって無駄なく動ける」という。

 実家でもパソコンを使えるように通信環境を整えた。部下からメールで問い合わせがあれば、指示内容を考えながら掃除し、母親の入浴の合間に返信した。

 「介護の経験は仕事に非常に役立つ」と男性は強調する。認知症の母親の行動の理由を探る努力を重ねたことで、仕事でも交渉相手の真意を探って提案する習慣がついた。男性は「介護が必要だという事実は変えられないが、解釈は変えられる。介護を仕事の足を引っ張るものととらえずに、相乗効果を発揮させ、同時に進行させたい」と語る。

周囲に両立の意思伝える

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 介護と仕事を両立させるには、どうすればいいか。

 両立策を企業に提案する会社「wiwiw(ウィウィ)」(東京)で、企業の相談に応じる 角田つのだ とよ子さんは「制度を駆使して両立させている自分の姿をイメージできないかもしれないが、仕事は辞めずに『両立させたい』と周囲に伝えてほしい。選択肢が広がるはず」と助言する。

 具体的には、〈1〉介護サービスや両立支援制度の情報を収集する〈2〉地域包括支援センターやケアマネジャーなどに相談する〈3〉会社は離職を防ぎたいと思っているものと心得て、上司や同僚に事情を伝える〈4〉家族と介護の専門職とのチームで支える意識を持つ――ことを呼びかけている。

 (この連載は、社会保障部・野口博文が担当しました)

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