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西日本豪雨で被災…高齢施設の入所者470人、別施設で避難続く

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西日本豪雨で被災…高齢施設の入所者470人、別施設で避難続く

 7月の西日本豪雨で被災した特別養護老人ホームなど高齢者向けの福祉施設を巡り、少なくとも18施設の入所者470人が今も、別施設で避難生活を送っていることが、読売新聞の調べでわかった。被災から3か月がたち、長引く避難に伴う環境の変化や人間関係の分断による心身の負担が懸念されている。

復旧めど立たず

 「利用者のストレスはピークだ」。広島県三原市の地域密着型特別養護老人ホーム「メヌホット三原」を運営する法人の橘高裕行・事業統括部長は心配する。

 施設は7月7日朝、土砂が流入し利用不能になった。入所者18人の大半は14キロ離れた系列施設に移ったが、広さの都合で個室希望でも相部屋になっている入所者も多い。認知症の人もおり、同じ部屋内で口論になったり、不眠を訴えたりしている。「元の施設に帰りたい」「遠くて面会に行けない」などの声も絶えないが、施設の復旧のめどは立っていないという。

 厚生労働省によると、7月6日の西日本豪雨で、建物損傷や床上浸水などの被害があった高齢者の入所型福祉施設は13府県276施設。死亡者はいなかったが、ピーク時で32施設の入所者691人が他の福祉施設や病院への避難を余儀なくされた。読売新聞が9月末に確認したところ、広島、岡山、愛媛、福岡の4県で少なくとも18施設の計470人が、元の施設に戻れていなかった。

持病悪化も

 福祉施設は介護保険法などに基づき、事前に避難先の確保が義務づけられており、今回も多くは系列施設に入所者を託している。

 愛媛県 大洲おおず 市の特別養護老人ホーム「かわかみ荘」は、周辺の施設がほぼ満床だったため、入所者44人を24施設に分散。中には元の施設から車で2時間以上離れた施設に移った人もいる。武田真彦施設長は「受け入れ先に慣れず、持病が悪化した人もいる」と表情を曇らせる。

 通所施設でも影響が出ている。在宅介護の支援やデイサービスを行う岡山県倉敷市 真備まび 町の小規模多機能ホーム「ぶどうの家真備」は浸水し、近くの公民館の一室を間借りして15人の高齢者を受け入れる。ホームのサービスを受けている女性(85)は、「職員は良くしてくれているが、やっぱり元の場所が一番安心する」と、施設の再開を待ち望む。今月末に別の場所に一時移転するが、元の施設の復旧には数か月かかる見込みだ。

熊本再開に時間

 2016年4月の熊本地震では熊本県内の入所型11施設が利用できなくなり、入所者は他施設に避難した。再開までに1、2年かかり、うち1施設は今も閉鎖している。県によると、災害後の工事ラッシュで業者が見つかりにくいことや、立地場所の安全性の確認などに時間がかかったという。

 閉鎖中の同県益城町の介護老人保健施設「ケアポート益城」は工事を請け負ってくれる業者が見つからず、ようやく決まった業者からは「工期は通常の倍かかる」と告げられた。

 利用者60人は県内の老健施設など30か所以上で避難生活を続け、60人いた職員もいったん解雇した。運営法人の松崎保仁課長は「建物を再建しても、再開後に利用者や職員がどの程度戻ってくるかは見通しが立たない」と頭を抱える。

行政、積極的に関与すべき

 東北福祉大の高橋誠一教授(高齢者福祉)の話「避難が長期に及ぶほど利用者の負担は大きくなる。行政は、施設が再建しやすいように補助金の事務手続きの簡素化などを図るとともに、避難中の利用者の生活相談なども積極的に関わっていくべきだ」

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