子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
不慮の事故(11)異物で窒息死の危険
不慮の事故では、小児科医で緑園こどもクリニック(横浜市)院長の山中龍宏さんに聞きます。(聞き手・萩原隆史)
子どもの様々な事故の中でも、極めて危険性が高いのが、喉に異物を詰まらせてしまう窒息事故です。窒息状態が5分続くだけで半数が亡くなり、10分たつとほぼ全員が死に至るほど時間が限られているためです。
逆さまにして背中をたたいたり、後ろから抱えるようにおなかを圧迫したりする方法ですぐに異物が出てくればいいのですが、なかなか取り除けないケースも少なくありません。代表的なものがスーパーボールです。
ある日の夕方のことでした。3歳の男児がスーパーボール(直径3・5センチ)を口に入れて遊んでいるのに気づいた母親が、「危ないので口から出して」と叱ったところ、驚いて吸い込んでしまいました。
指では取り出せず、救急搬送先の病院で特殊な医療器具を使って摘出されましたが、病院到着までに40分近くたっており、意識も呼吸も回復しないまま半年後に亡くなりました。
スーパーボールは丸くて弾力があり、表面が滑らかなため、喉にぴったりとはまり込みやすいのです。逆にいったんはまると、医療器具を使ってもつるつるとした表面をうまくつかめず、簡単には取り除けません。
子どもが窒息しやすいものとしては、他にミニトマトや大粒のブドウ、みたらし団子、こんにゃく入りゼリー、あめ玉などが挙げられます。これらの形や大きさはほぼ同じで、詰まりやすいものはどんなものかがお分かりいただけると思います。
スーパーボールは、子どもがお祭りや催しなどで手に入れる機会が多く、以前から窒息はつきものでした。ところが、世間でさほど注意が払われているように思えませんし、死亡事故のニュースもあまり見かけません。なぜでしょうか。次回に続きます。
【略歴】
山中龍宏(やまなか・たつひろ)
1947年、広島市生まれ。小児科医。東京大医学部卒。子どもの事故防止に取り組むNPO法人「セーフ キッズ ジャパン」(東京)理事長。
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