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汗吸いやすい帽子・寝たまま着られる服…闘病の子へ母考案グッズ、普及へ団体設立

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汗吸いやすい帽子・寝たまま着られる服…闘病の子へ母考案グッズ、普及へ団体設立

髪が抜けた子供用の帽子などを紹介する石嶋瑞穂さん。「病気と闘う子や家族を応援したい」と話す(9月6日、大阪府池田市で)=宇那木健一撮影

 病気の子も、障害のある子も「かわいい」や「かっこいい」を楽しみたい――。子供の闘病生活を経験した母親らが、医療グッズなどのデザインや機能性を高め、看護や治療に生かす試みを「チャーミングケア」と名付け、考案したグッズの普及を図る団体を発足させた。需要が少ない子供向けのものはあまり製造されていないのが実情。治療に前向きになれる効果も期待でき、注目を集めている。

おしゃれで前向きに

 「がんの治療中は肌が荒れるので、この帽子は汗を吸いやすい布製。女の子向けにリボンを付けました」

 大阪府池田市の石嶋瑞穂さん(40)は7月、京都市内の大学で、小児がん治療で髪が抜けた子供用の帽子を掲げ、学生らに説明した。1月に発足させた市民団体「チャーミングケアラボ」の代表で、普及に向けた講演活動にも力を入れる。

 活動のきっかけは2016年、7歳だった長男(9)が白血病と診断され、つきっきりで看病した体験にある。抗がん剤などを定期的に投与するため、体に長さ十数センチほどのカテーテル(管)をつけたままにした際、管を保護する「カテーテルカバー」を手作りするよう病院から依頼された。

 需要が少ないため生産されておらず、布で簡単に作れるので患者側が用意するケースが多いという。それを聞いた友人がチェックの生地で作り、長男にプレゼント。治療を嫌がっていた長男が「すごいやろ」と笑顔で看護師に自慢する姿を見て、「病気でも『かわいい』『かっこいい』は必要なんだ」と気づいた。

 長男の退院後、同じ境遇の母親らのためにと、おしゃれなカバーや、髪が抜けた子供向けの帽子を作り、ネットで販売。すると、同様にグッズを手作りしたり、輸入品を販売したりする母親とのつながりが広がり、1月、市民団体を結成した。

 4月にホームページ(HP)を開設し、チャーミングケアの考え方を発信すると、子供用車いすの普及団体など約60団体が賛同。HPでは、カバーや帽子、治療で増える診察券の収納ケースなどのグッズを販売する団体の紹介も行う。製薬会社からの講演依頼もあるといい、現在、法人化の準備を進めている。

市販のものが見つからず、自作

 国立がん研究センター(東京)によると、薬の副作用で髪が抜けたり、手術で体の一部を失ったりした人向けに、カツラや化粧などで外見の変化を補う「外見(アピアランス)ケア」は、大人向けに浸透してきた。治療に前向きになれるなど心理的な効果が見込めるが、患者数が少ないなどの理由で子供が対象となることはあまりなかった。

 石嶋さんと共に活動する奥井のぞみさん(34)(東京都)も、子供への対応が不十分だと感じた一人だ。

 脳性まひで寝たきりの長男(8)のため、寝たままでも着たり脱いだり出来る服を市販のものから探したが見つからず、自作した。3年前から自作の衣類や医療グッズの販売を始め、今では、七五三や卒業式用のスーツやワンピース、はかまも制作。「晴れ着なんて諦めていたけど、見つかってよかった」などと喜ばれているという。

 石嶋さんと奥井さんは「おしゃれとか、使いやすいとか、ちょっとした工夫で闘病や療養の景色が変わる。そうした事例を寄せてもらい、発信していきたい」と語る。

          ◇

 東海大学医学部の井上玲子教授(小児家族看護)の話「チャーミングケアの考えは長期治療、療養中の子供にとってつらさを紛らわせ、心を豊かにする効果が期待できる。家族で病気や障害を受け入れ、乗り越えていくきっかけにつながる」

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