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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

医療・健康・介護のコラム

年齢を重ねても張りのあるお肌を保つために

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学会会場の横浜で「フルーツサラダ」を。私の肌のコラーゲン密度にもいい影響かある・・・・・・かな?

 9月28、29日に横浜市で開催された、「第20回 日本褥瘡学会学術集会」へ参加しました。「 褥瘡(じょくそう) 」とは「床ずれ」のことです。「外部からの圧力」などで血流が障害され、皮膚が壊死することで生じる「皮膚の潰瘍」です。私たちは、眠っている間に無意識のうちに寝返りを打っていますね。この寝返りのおかげで、起きたときには皮膚のどの場所にも「床ずれ」は発生していません。しかし、体の 麻痺(まひ) などで寝返りを打てないような状態になると、わずか数時間で床ずれができることがあります。


皮膚がぴりっと裂ける「スキン・テア」

 「床ずれ」についてさまざまな知見を積み重ねてきた「日本褥瘡学会」では、最新の治療法が議論されています。最近は、床ずれだけでなく「スキン・テア」の予防や治療法についてもさまざまな研究成果が発表されています。

 「スキン・テア(傷)」とは、張りや潤いが低下したことで、ラップがぴりっと破れるように皮膚が裂けてしまった状態です。皮膚が弱くなると、車椅子のフットサポート(足置き)に足を軽くぶつけたり、介護者がおむつを交換しようと足をグッと握ったりしただけでも、スキン・テアが生じることがあります。痛みが強く、治るまでの時間もかかるため、患者さんにはとても苦痛な状態です。床ずれ同様、介護やサポートをする側は、患者さんがなるべくスキン・テアを作らないように注意することが大切です。

スキン・テアの前にスキン・フレイルが

 さて、スキン・テアを作らないためには、どうしたら良いのでしょうか。淑徳大学看護栄養学部准教授の飯坂真司先生が、今回の学会で大変興味深い発表をされていました。

 図1は、スキン・テアへ至る前の「スキン・フレイル」の概念図です。

図1(飯坂真司准教授提供)

 「フレイル」とは英語の「frailty(虚弱)」を訳したものです。高齢者の運動能力や認知機能が低下してきた状態を指し、日本老年医学会が2014年に提唱した言葉です。

 「スキン・フレイル」はつまり「皮膚の虚弱・ぜい弱状態」という意味です。皮膚が乾燥することで、表皮や真皮が薄くなり、ざらざらと肌のキメが失われると、やがてスキン・テアが生じるリスクが高くなります。そうなる前に、こまめに保湿剤を塗る必要がありますが、それだけでは不十分で、同時に体内からの改善も大切です。私たちも、どんなに高級な化粧水を使っていたとしても、毎日の食生活が乱れれば、健康な肌を保つことが難しいことは身をもって知っています。

皮膚のコラーゲン密度と食習慣の関連を調べた研究

 飯坂先生は、関東に住む「比較的自立した地域高齢者118人(平均年齢約74歳、女性約83%)」を対象に、超音波を使って真皮のコラーゲン密度を計測し、食習慣と皮膚状態の関係を調査しました。(1)

 印象的だったのは、72歳女性2人の皮膚の超音波写真でした。同じ年齢なのに、皮膚のコラーゲン密度に大きな差があり、明らかな違いがあることが映し出されていたのです。また超音波画像を見れば、コラーゲン密度が高い方の皮膚の状態が良いことは明らかでした。飯坂先生の調査によると、2人の女性には食習慣に大きな違いがあったそうです。皮膚のコラーゲン密度が高い女性の方が果物や野菜を多く取っていました。

 さらに調査では、肥満の方ほど皮膚のコラーゲン密度が低いこともわかりました。

 高齢になってもしっかりと栄養と水分を摂取して、さらに適正な体重を保つことが、年を重ねても健康な肌を保つ 秘訣(ひけつ) かもしれません。まだ限定的な調査ではありますが、大変興味深い結果であると思います。美容に敏感な40代のひとりとしても、見逃せないお話でした。

スキン・フレイルは防ぐことができる

 「スキン・フレイル」は、栄養摂取や皮膚の保湿など生活習慣の改善で防ぐことができます。しかし、そのためには「自分は(家族は)スキン・フレイルかもしれない」と気付くことが大切です。「皮膚がシワシワなのは年齢だから仕方がない」と安易に判断せず、皮膚がラップやティッシュペーパーのようになっていないかをよく観察して、「おかしいな」と思ったら早めに対応することが大切です。特に、高齢者のすねや足の甲の皮膚が、粉が吹くほどカサカサになっていないかよく見てください。医療や介護に関わる方もよく注意して観察してほしいと思います。(在宅訪問管理栄養士 塩野崎 淳子)

(1)1.Iizaka S, Nagata S, Sanada H. J Nutr Health Aging 2017;21(2):137-146.

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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1件 のコメント

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スキンフレイルからのスキン-テア

栄養は万病に効く

塩野崎先生が記されたスキン-テアは、強い痛みで青アザを伴うため虐待と間違われることも多いそうですね。一所懸命に介護しても、虐待に間違いられたらか...

塩野崎先生が記されたスキン-テアは、強い痛みで青アザを伴うため虐待と間違われることも多いそうですね。一所懸命に介護しても、虐待に間違いられたらかないません。身体介助すら怖くてできなくなってしまいます。だから、予防が大事ということですね。予防する薬はないのだから、食事からの栄養が大事。しかるに、どんな食事で予防できるのか十分に分かっていないとのこと。果物や野菜が大事でも糖尿病や腎臓病など持病があれば食事制限にて摂れないことも。高齢者の皮膚はこれまでの日焼けなどの生活環境に加えて、食事内容が不十分で筋力が少なくなったサルコペニアなどの人にも多いようです。やはり栄養は大事。スキン-テアを恐れて身体介助が不十分になることないよう、万病に効く栄養で予防したいものです。

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