心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
広がる白内障手術の選択肢 オーダーメイドのレンズも登場
白内障はご存じの通り、目の水晶体が濁って視力が低下する病気で、年間100万件以上の手術が行われています。保険診療として認められているのは、超音波で濁った水晶体の核を砕いて吸引し、単焦点の眼内レンズを挿入する手術です。
この一般的な手術のほかに、先進医療(現在は保険適用ではない先進的な医療で、厚生労働大臣の承認を受けた施設、医師により行われる)として多焦点眼内レンズを挿入する手術や、さらにオーダーメイドの眼内レンズを挿入する「プレミアム白内障手術」など、選択肢は広がっています。
保険診療は単焦点レンズ使用 先進医療やプレミアム手術では多焦点レンズ
こうした事情に詳しい、お茶の水・井上眼科クリニック副院長の比嘉利沙子さん(写真)に話を聞きました。
――使用される眼内レンズに差があるのですか。
そうです。保険診療でのレンズは単焦点に限られます。遠方か近方かどちらかの距離にピントを合わせたレンズですので、遠くに合わせた人は近方視用の老眼鏡、近くに合わせた人は遠方視用の眼鏡が必要になります。これに対し、先進医療や、私たちが「プレミアム白内障手術」と呼んでいる手術では、遠近ふたつの距離に合わせられる多焦点眼内レンズを使います。多焦点という名称ですが、原則は2焦点です。
――多焦点眼内レンズの特徴を教えてください。
遠近ふたつの焦点に分ける方法の原理の違いから、2種類の眼内レンズがあります。最近は、これとは別の考え方で、焦点深度を広げたタイプの眼内レンズもでてきました。多焦点眼内レンズは、ひとつの眼内レンズで遠近ともにピントを合わせようとする欲張ったものですが、焦点をふたつに分けることから、どうしてもそれぞれのピントがやや甘くなります。それに、ハロー、グレアと呼ばれる光のにじみが出ることがあります。見え方に神経質な人、見え方の精密さが要求される仕事をしている人にこのレンズが向かないのは、そういう理由からです。
――焦点をふたつに分けるということですが、スイッチのようなものがあるのですか。
ふたつに分かれた光の経路のうちどちらを利用するかは、ものを見ながら無意識のうちに行われます。つまりスイッチは人間の脳にあるといえるでしょう。
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