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人材確保へ企業が保育所…九州・山口422施設、「早朝、深夜でも安心」 待機児童対策にも期待

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 企業などがオフィス内やその周辺に保育施設を設ける「企業主導型保育事業」が、九州・山口でも広がっている。従業員の働き方に合わせた保育サービスを提供し、人材確保や離職防止を図ることが狙い。地域住民の子どもを受け入れる事業所もあり、待機児童対策としても期待されている。

 「よく寝ています」。大分市の「ハーネス保育園」で、タクシー乗務員の仲林由香里さん(36)は、娘の 深結みゆう ちゃん(4)の寝顔を見てほほえんだ。

 同園は、同市の「ハーネスタクシー」が本社内に整備した企業主導型保育所。同社のドライバー29人のうち25人が女性で、こまやかな気づかいやおもてなしが乗客に好評という。ただ、「子どもがいるので長時間働けない」「預け先に困る」などの理由で採用に結びつかないケースがあったため、5月に同園を開いた。定員は12人。従業員の子どもは勤務時間に預かり、地域の子は午前8時から午後7時まで受け入れている。

 仲林さんは別の仕事をしていたが、保育所を作る予定があると知り、4月に転職した。勤務時間の朝6時から深夜2時まで深結ちゃんを預けている。「一般の施設では難しい早朝や深夜に見てくれて、仕事の合間に立ち寄ることもでき、安心です」

 同社統括部長の鈴木尚子さん(48)は「保育所が人材確保の強みになっている」と話す。

 企業主導型保育事業は、企業の保育所設置を後押しして待機児童を減らすため、国が2016年度に制度化した。認可外保育所だが、保育士数や施設面積などの基準を満たせば認可保育所と同等の手厚い助成が受けられるため、従来の「事業所内保育所」より設置しやすい。「地域枠」を設けて近隣住民らの子どもを受け入れることもできる。

 同事業の助成決定などを行う児童育成協会(東京)によると、今年3月末現在、全国に2597施設(定員5万9703人)あり、九州・山口では422施設。大学やIT企業、デパートなどが整備している。

 山口県下関市の日新運輸工業は4月、本社近くに「ひなぎく保育園」(定員12人)を開設。担当者は「地域枠を設けたことで待機児童だった子どもが入れるようになり、地域の方々にも喜ばれている」と話す。

 福岡市の福岡銀行も4月、同市南区の高宮支店が入るビルに「ふくぎんきっずらんどpetit petit」(定員12人)を整備した。子どもを保育所に預けられず、育児休業を延長せざるを得ない女性行員がいたためだ。

 グループの熊本銀行と親和銀行のほか、利用契約を結んだ企業の従業員も利用できる。担当者は「働き続けたいと望む女性行員が増えている。早期復職を支援したい」と話す。

認知度低く、定員割れも

 企業主導型保育所は急増している一方で、定員割れの施設が目立ち、保育の質の確保も課題となっている。

 福岡市が市内85か所の企業主導型の状況を調べたところ、定員に対する入所児童数の割合は9月1日現在で55・1%。担当者は「施設によっては地域住民も利用できることがあまり知られていないようだ」と話す。長崎市や宮崎市、鹿児島市も50%を下回っている。

 国も定員割れや安易な設置を防ぐため、今年度から、地域枠を設ける際は事前に自治体に相談して保育ニーズを把握することを助成金申請の条件とした。

 決められた基準を満たさずに運営している事業所も多い。児童育成協会が2017年度に全国800か所で立ち入り調査を行ったところ、施設や人員の不備が指摘されたり、健康診断の適正な実施を求められたりした施設が607か所に上った。担当者は「改善報告書の提出を求めるなど、指導を徹底したい」と話す。

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