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コラム

『わたし糖尿病なの あらたなる旅立ち』 南昌江著

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1型糖尿病患者が糖尿病専門医に

新著を手にする南さん。「糖尿病でもできないことはない」とのメッセージが込められている

 14歳の時に一生、インスリン注射が必要な1型糖尿病を発症した電器店の娘は、医師となり、福岡市に内科診療所を開業した。それから20年。診療所は、西日本で最も多くの1型糖尿病患者を診る施設になった。本書には、そんな南さん自らの病気体験、家族とのかかわり、診療所開業に込めた思い、といった自伝的な話のほか、1型糖尿病治療の変遷やインスリン注射の使い方、食事療法のコツ、血糖自己測定の上手な使い方など病気との付き合い方についての具体的なアドバイスも盛り込まれている。

 また、1型糖尿病の子どものサマーキャンプに参加したヘルパーらの寄稿もあり、小児発症が多い1型糖尿病の本人や家族の病気への理解を助け、きっと勇気を与えてくれるに違いない。

 1型糖尿病は毎年10万人に2人が発症するというまれな病気だ。 膵臓(すいぞう) の細胞が破壊され、インスリンが出なくなって血糖が上昇するので、インスリンの注射が必要になる。一方、メタボなどが引き起こすのが2型糖尿病。いずれの糖尿病も、食事や運動という生活習慣の管理は、治療の大切な要素になる。

 南さんのクリニックはかなりユニークだ。スタッフは医師、看護士、管理栄養士など  約20人だが、南さんも含め、医師、管理栄養士、事務職員に1型糖尿病の患者が4人いる。自分自身が日々、血糖コントロールに気を使いながら患者と接しているわけで、これほど患者の気持ちがわかる診療所はないだろう。1型糖尿病の治療で知られるとはいえ、一般内科診療所のため、患者の数は2型糖尿病の方がずっと多い。糖尿病以外の患者も来院する。

 デザイナーに依頼した診療所の建物は、おしゃれな作りであると同時に、患者の居心地の良さに配慮している。食事の指導のための調理施設や運動ができるスペースがあり、南さんらスタッフも患者と一緒にレシピの工夫をしたり、汗を流したりする。ここから「アイデアいっぱい糖尿病ごはん」(南昌江内科クリニック編著、書肆侃侃房)という本も生まれた。食事・運動療法を中心に、薬なしで血糖管理する患者も少なくない。

「1型糖尿病でもできないことはない」

 そんな診療所を作ってきた南さんのモットーは、「糖尿病でもできないことはない」。診療所の外でも、患者の支援活動に力を入れる。患者と医療スタッフ混成のマラソンチーム「TEAM DIABETES JAPAN」を設立し、ホノルルマラソンなど各地の大会に出場するほか、1型糖尿病の医師の会を設けて積極的に情報交換し、患者支援に役に立てている。

 南さんは「糖尿病に向き合おうとしている患者さんはもちろん、なかなか向き合えずにいる患者さん、サポートされる家族の方や医療従事者の方々に、ぜひとも読んでいただきたいと思います。勇気を持って前に踏み出すことの大切さ、やればできるという自信を持っていただければうれしいです」と話している。医歯薬出版、1800円(税別)。(渡辺勝敏 読売新聞専門委員)

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