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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

コラム

腸が胸に入り込み、肺がほとんどない超重症 先天性横隔膜ヘルニアの赤ちゃんを救うには…

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 胎児超音波(エコー)検査の普及によって、先天性横隔膜ヘルニアの治療成績は大きく変わりました。先天性横隔膜ヘルニアとは、以下のような病気です。

 人間の胸とおなかを隔てる筋肉の膜を、横隔膜と言います。先天的に横隔膜に (あな) が開いていると、この孔を通して腸が胸の中に入り込みます。腸は肺を圧迫しますので、赤ちゃんは重度の呼吸障害になります。

搬送中に呼吸不全 救命は難しく

 こういった赤ちゃんが町の産院で生まれると、救命は非常に難しくなります。大学病院に搬送されてくるまでの間に、赤ちゃんは全身がチアノーゼになっていて、呼吸不全や血液の循環不全を併発してしまいます。大学病院で赤ちゃんの到着を待っている私たちは、ただちに赤ちゃんを人工呼吸器につなぎ、緊急に手術を行って横隔膜の孔を閉じます。ですが、すでに赤ちゃんの具合は悪くなっているため、術後すぐに回復するとは限らず、救命できないケースも多々ありました。

【名畑文巨のまなざし】
ポジティブエナジーズ(その11) 世界をめぐり撮影したダウン症の子どもたちは、みなポジティブなエネルギーにあふれていました。南アフリカの5歳と2歳の兄弟。弟のマットくん(右)がダウン症です。お兄ちゃんは優しい性格で、いつも弟の面倒をみているよう。マットくん、電池で動くロボットのおもちゃが感性を刺激したのか、手に持って観察に没頭しています。何かに集中することは、よくあることなのでしょうか、わかっているかのように、その様子を優しく見守るお兄ちゃんが印象的でした。南アフリカ共和国プレトリア市にて

 ですから、もし胎児エコー検査により、生まれる前に先天性横隔膜ヘルニアを診断できたならば、腹壁異常の赤ちゃんのケースと同じように母体を搬送し、帝王切開で取り出すと同時に赤ちゃんの治療を始めれば、治療成績は向上すると私たちは考えたのでした。

エコーで胎児を診断 治療成績は上がると思ったが…

 胎児エコー検査で赤ちゃんの胸の中に腸が入り込んでいる像を認めると、先天性横隔膜ヘルニアと診断し、産科と小児外科で合同会議を開きます。産科医と小児外科医が全員そろっている日を選んで帝王切開を行い、赤ちゃんを誕生させます。手術室には小児外科医が待機していて、すかさず赤ちゃんに気管内挿管し、酸素バッグを押します。そのままNICU(新生児集中治療室)へ運び、呼吸管理や循環管理を始めるのです。

 ところが、こうした試みを行っても、赤ちゃんの呼吸状態はまったく改善せず、循環状態もどんどん悪くなっていくパターンが続出しました。これは私たちの施設だけの話ではありません。日本全体の横隔膜ヘルニアの成績が悪化したのです。

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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

 生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます。

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松永正訓(まつなが・ただし)

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster Prizeなど受賞歴多数。2006年より、「 松永クリニック小児科・小児外科 」院長。

『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』にて13年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。2018年9月、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中央公論新社)を出版。

ブログは http://wallaby-clinic.asablo.jp/blog/

名畑文巨(なばた・ふみお)

1958年、大阪府生まれ。外資系子どもポートレートスタジオなどで、長年にわたり子ども撮影に携わる。その後、作家活動に入り、2009年、金魚すくいと子どもをテーマにした作品「バトル・オブ・ナツヤスミ」でAPAアワード文部科学大臣賞受賞。近年は障害のある子どもの撮影を手がける。世界の障害児を取材する「 世界の障害のある子どもたちの写真展 」プロジェクトを開始し、18年5月にロンドンにて写真展を開催。大阪府池田市在住。

ホームページは http://www.fumionabata.com/index.html

名畑文巨ロンドン展報告

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