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自閉スペクトラム症の早期診断へ一歩

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不器用さに関わる脳の活動を利用

自閉スペクトラム症の早期診断へ一歩

 自閉スペクトラム症の子どもは、スプーンやフォークがうまく使えない、着替えが遅いなどの不器用な一面がある。金沢大学の研究グループは、5~7歳の自閉スペクトラム症児を含む子どものゲーム中の脳活動を計測。自閉スペクトラム症児の「不器用さ」に関わる脳の特徴を、世界で初めて明らかにした。この特徴を利用すれば、就学前後の時期に自閉スペクトラム症を高精度で識別することが可能になるという。研究の詳細は、9月5日の医学誌「 Journal of Neuroscience」(2018;38:7878-7886 )に掲載されている。

ボタン押しの反応遅く、脳にも異常あり

 近年、発達障害者への対応は社会の大きな課題となっている。発達障害の中でも自閉スペクトラム症は、生後早期から症状が現れる脳の発達障害で、人とのコミュニケーションがうまくいかない、興味や活動の範囲が限定されるといった特徴がある。誰もが無意識にできるような簡単な作業がうまくできない不器用さ(発達性協調運動障害)も、しばしば見られる。

 また、大脳生理学的に自閉スペクトラム症は、脳神経の興奮と抑制のバランスが崩れていると言われている。健康な大人が運動を行うとき、脳の運動野からガンマ波が出現するが、ガンマ波は脳の興奮と抑制のバランスを反映すると考えられている。

 自閉スペクトラム症は、できるだけ早い段階に特徴を捉え、医療だけでなく教育機関や福祉施設などの多領域が連携して支援に当たることが重要となっている。そのためにも、早期の客観的な診断指標が必要である。しかし現時点では、行動観察が唯一の診断方法だ。また、自閉スペクトラム症児の運動中の脳活動は、ほとんど明らかにされていない。

 そこで研究グループは、幼児でも楽しく集中できるようなボタン押しゲームを作成した。犬が走りながら果物を獲得するゲームで、果物が現れたらできるだけ早くボタンを押すというもの。このゲームを、5~7歳の自閉スペクトラム症の子ども14人と健康な子ども15人にプレイしてもらい、ボタンを押すときの脳活動を調べた。

 脳活動の計測には、幼児用の脳磁計( Magnetoencephalography; MEG )を使った。脳の微弱磁場を頭皮上から体に全く害のない方法で計測する装置で、幼児の頭のサイズに合わせて開発されている。MEGであれば、放射線を用いたりせず、狭い空間に入る必要もない。

 検討の結果、自閉スペクトラム症児は健康児に比べて、視覚刺激からボタンを押すまでの反応時間が160ミリ秒(1ミリ秒=1,000分の1秒)遅かった。また、運動実行に対する脳のガンマ波の周波数が約6Hz 低く、パワーも72.1%乏しかった。さらに、反応時間と脳のガンマ波を利用すると、86.2%の精度で自閉スペクトラム症の診断が可能であった。

 以上から、自閉スペクトラム症児はボタン押しゲームの実行中に、健康児とは行動面だけでなく、大脳生理学的な面においても違いがあることが示された。研究グループは、「自閉スペクトラム症児への早期からの理解とサポートが、その後の社会への適応を左右する。したがって、就学前後の子どもに負担なく、楽しみながら脳機能を測定することで、自閉スペクトラム症の診断が可能になるという今回の研究結果は、大変意義のあるものだ」と研究結果を評価した。(あなたの健康百科編集部)

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