大人の健康を考える「大人び」
コラム
認知症予防(5) カレンダーで日時確認
このシリーズでは、日本認知症予防学会理事長の浦上克哉・鳥取大教授に聞きます。(聞き手・諏訪智史)
「今日は、何月何日ですか?」。認知症の検査で、よく行う質問です。認知症は最近の記憶が抜け落ちやすい特徴があり、日付や曜日が正しく認識できるかを調べるためです。
病院の「もの忘れ外来」などで患者を診ていると、しばしば患者の家族から「カレンダーに書いたことは、忘れにくいみたい」と聞かされることがあります。
そこで、勧めているのが、カレンダーを目につく所に貼り、日々の予定を書き込むのを習慣にすることです。病気の進行そのものを抑えられるわけではありませんが、日時の感覚が薄れるのを防ぎ、張り合いのある生活を送ることにつながります。
友人と会ったり、習い事に行ったりするような用事がなくても、生活に密着したことを書き、予定を「見える化」するのがポイントです。例えば、買い物や病院に行く日、可燃ゴミや不燃ゴミの日、自治会費を払う日などでもよいでしょう。予定を目で認識することは、行動意欲を高めるだけでなく、持ち物を準備したり、出発時間を調べたりすることにもつながり、脳にとっても良い刺激が与えられるはずです。
逆に、本人が続けていた家事や仕事を取り上げるなど、行動を制限するような行為は自信を失わせ、かえって症状を悪化させる恐れがあります。もの忘れが増えたとしても、何もできなくなるわけではありません。習慣として身についたことに関する記憶は、認知症になっても衰えにくいものです。本人ができることを見つけ、家庭や社会での役割を保つことが重要なのです。
【略歴】
浦上 克哉(うらかみ かつや)
1983年、鳥取大学医学部卒。同大学助手、講師を経て、2001年から教授。大学病院などに「もの忘れ外来」を設け、認知症の早期発見と予防に取り組む。日本認知症予防学会理事長。著書に「認知症&もの忘れはこれで9割防げる!」(三笠書房)などがある。