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支える犬たち(下)盲導犬デビューは4割
「盲導犬になれるのは、10頭のうち4頭くらいです」
九州盲導犬協会(福岡県糸島市)が定期的に開いている訓練センター見学会で、広報担当の藤田久美さん(51)が約40人の参加者に語りかけた。
1年ほどの訓練の間に、1頭ごとの性格が見えてくる。「デビューするのは、喜んで仕事ができる健康な子だけ」と藤田さん。
他の犬は能力が劣っているというわけではない。「緊張しやすい」「短期集中型」などの性格から、盲導犬として生きるのがストレスになるようであれば、犬にとって幸せではない。そうした犬は、家庭犬としてボランティアに引き取られる。
盲導犬候補の子犬を確保するための繁殖犬になる場合もある。普段は「繁殖ボランティア」の家庭で暮らし、繁殖期は同協会に預けられる。生まれた子犬は、生後2か月まで同ボランティア宅で育つ。子犬が1歳になるまで預かる「パピーウォーカー」や、余生を見守る「リタイア犬ボランティア」もいる。
同協会は今年、設立35周年。福岡市の主婦、 高椋 聖子さん(70)は30年前からのボランティアだ。初めて預かったシェパードの子犬は盲導犬にはなれなかったが、その後は再び高椋さん宅で暮らし、協会のPR犬としても活躍した。2頭目のラブラドルレトリバーは繁殖犬として活躍。今は、やはり繁殖犬だった3頭目のラブラドルレトリバーの「イーリス」のリタイア犬ボランティアをしている。
今はイーリスたちの子や孫の世代が、現役の盲導犬として活躍している。「きっかけは犬が好きというだけだったけど、一介の主婦が社会に関わることができたのはうれしい」と話す。
補助犬の育成には、1頭あたり数百万円がかかる。自治体の助成はデビューした頭数分しか出ないのが基本で、同協会の場合、運営費の約9割が募金などの寄付金で支えられている。
日本聴導犬協会(長野県)では、特に引退犬の医療費などが不足しているといい、専用の募金箱を作って協力を呼びかけている。担当者は「聴導犬の普及につなげたい」と話す。
厚生労働省は啓発ステッカー=写真=を作り、自治体を通じて無料配布している。飲食店などが店頭に貼って受け入れをアピールするのも普及の後押しになる。九州盲導犬協会では、厚労省のステッカーのほか、全国盲導犬施設連合会が作成したステッカーも無料配布している。
※このシリーズは植田優美が担当しました。
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