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報酬改定揺れる「放課後デイ」…多くの事業所減収、障害の度合いで差

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報酬改定揺れる「放課後デイ」…多くの事業所減収、障害の度合いで差

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 障害のある学齢期の子どもが通う「放課後等デイサービス(放課後デイ)」が、今年度の報酬改定によって揺れている。利用する子どもの障害の重さに応じて事業所の基本報酬に差がつく仕組みになり、多くの事業所が減収になったためだ。事業者や保護者からは戸惑いの声も上がっている。(玉城夏子)

「学童支援ゆめの森」の予定表。子どもたちの放課後の時間を豊かにする工夫が凝らされている

 鹿児島市の放課後デイ「学童支援ゆめの森」を訪ねると、子どもたちの元気な声が聞こえてきた。「今日は工作をしましょう」と指導員の迫田美和さん(50)が呼びかけると、子どもたちは紙皿に絵を描き、飛ばして遊んだ。

 「ゆめの森」を利用しているのは、特別支援学校2校と小学校8校の特別支援学級などに通う小中学生42人。知的障害や発達障害があり、集団行動が苦手な子も多い。工作の輪に入らず、自分の遊びに没頭する子もいる。園長の花木 正斉まさなり さん(42)は、一人ひとりに声をかけて見守る。

 「放課後デイは、学校や家庭とも違う子どもたちの居場所。安心して遊べる空間にしたい」と花木さん。公園に行ったり、野菜を植えたり、様々な体験を通して発達を促す。最初は職員が付きっきりでみていた子が、友達と遊ぶようになったり、協力して何かを作ることを楽しむようになったりするそうだ。

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 放課後デイは2012年の制度化以降、事業所の参入が相次いだ。一方で、DVDを見せるだけといったずさんな運営の事業所の存在が問題となり、厚生労働省は今年度、質の向上を目指すために、これまで一律だった報酬を見直した。

 新たな仕組みでは、障害の重い子を多く預かる事業所を「区分1」、軽い子が多い事業所を「区分2」と分けて、報酬に差をつけた。基本報酬は「区分1」は3~5%減、「区分2」は10~12%の減となる。

 「ゆめの森」には比較的重い子が多く、花木さんは「区分1」になると予想した。しかし、市から届いた通知は報酬の低い「区分2」だった。花木さんは再判定を要請。市が改めて保護者に聞き取りを行い、「区分1」となった。それでも新たな報酬体系では今年度は約100万円の赤字になりそうだという。

 市町村からの聞き取りを受けて落ち込む保護者もいる。10歳の息子が「ゆめの森」に通う母親(39)は「親としては『できるようになったこと』を喜びたいのに、『できないこと』を伝えないといけないのがつらい」と話す。

 花木さんは「支援の質を上げるための報酬改定のはずなのに、事業所にも保護者にも、市町村にも負担がかかっている。障害のある子どもたちの大切な居場所が保証される仕組みにしてほしい」と訴える。

「対応に地域差」指摘も

 自治体の対応はまちまちだ。

 鹿児島県日置市では4月、市内の6事業所すべてが「区分2」と判定された。ある事業所は昨年度より約400万円の減収となる見通しで、予定していた正職員の採用を取りやめたという。運営する法人は「我々の認識と判定が 乖離かいり している」と首をかしげる。

 一方、福岡市は、150事業所のうち「区分1」が95か所(63.3%)、「区分2」が55か所(36.7%)となった。担当者は「事業所と保護者に面談してもらい、その結果で判断した」としている。

 放課後デイの事業者団体「障害のある子どもの放課後保障全国連絡会」は4~5月、各地の210事業所を対象に調査を行った。判定の際に「自治体からのヒアリングがなかった」と答えたのは130事業所で6割を超え、その多くが「区分2」だった。

 また、「区分1」の半数近く、「区分2」では7割以上で減収が見込まれ、「事業所廃止の危機」と答えた所も2割近くあった。

 連絡会事務局長の田中祐子さん(52)は「今の仕組みでは、手厚いサービスを提供して子どもの生活力が上がると報酬が低くなるという矛盾がある。地域差が大きいことも問題だ」と指摘する。

 厚労省障害福祉課の担当者は「ケアの質をどう評価するかなどの課題を整理し、3年後の報酬改定に生かしたい」と話している。

放課後デイ 児童福祉法改正により2012年に制度化。利用者の負担は原則1割。事業所は4月現在、全国に1万1728か所。利用者は約18万人。

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