心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
「まぶたの違和感」「目やに」の訴え……まれに視野異常が原因のケースも
私たち医師は、よくわからない症状や視診上の異変があると、教科書や文献を調べて似た症状の記載がないかを探します。これをAコースとします。逆に、教科書や文献から知識を豊富に蓄えおけば、よくわからない症状や視診上の異変に出会ったとき、「あ、あれだ」と気付くことができます。こちらはBコースとしましょう。
一般にAコースの成功率は高いですが、Bコースのやり方がうまくいくことは少ないようです。つまり、教科書的な知識をいくら蓄えても、それを実際に診療で活用できるかどうかは、別問題だと思われるからです。実際の臨床現場では、「教科書や文献」よりも「自身の臨床経験」を通して得た知識が功を奏することの方が多い気がします。
やや自慢になりますが、以下は40年あまりの私の臨床経験が生きた例です。
眼科3軒回っても「異常なし」 違和感とれなかった男性
その患者は67歳の男性Nさんで、10年前から糖尿病の治療もしています。「9か月ほど前から、右目にいつも目やにがついている気がする」というのが来院の理由です。
3軒ほど地元の眼科に行きましたが、目に異常はなく、目やにも問題になるほどではないとの見解でした。糖尿病のせいでもなく、「疲れや加齢のせいでしょう」などと言って目薬を処方した医師もありましたが、この違和感はずっと取れませんでした。
そして4軒目に、普通の眼科ではなく、神経眼科を名乗る私の外来を選んだということです。確かにNさんの訴えである「目やに」や「かぶさる感じ」に見合う目の変化はなく、訴えの理由はわかりませんでした。しかし、なぜかその時、ふと思い出した過去の症例がありました。
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