共に働く
医療・健康・介護のコラム
第3部[変わる社会](4)PTA、自治会 運営工夫
「それぞれが時間ある時に」
共働き家庭の増加で、PTAや自治会など地域活動のあり方が課題になっている。
首都圏に住む女性会社員(38)は今年度、3人の子どもが通う小中学校のPTAで、広報委員や登校見守りなど三つの役を担う。子ども1人につき1役という「半ば強制」の割り振りがあるからだ。
会社員の夫と分担しているが、運動会の撮影や印刷物の作成で忙しい月は、半休や時差勤務を使い、10回以上も学校に出向いた。「印刷作業は平日の校内で行うなど決まりも多く、大変だった」と話す。
会長ら本部役員は年に100日以上学校に行く「激務」。立候補者は例年少なく、残った役は親同士の他薦で選ばれる。「指名された人たちが集まって役員を決める場では、泣き出す人もいた。私も名指しされないかと不安です」
「日中の活動が多いPTAや自治会などの運営は、主に専業主婦によって支えられてきた。共働き化が進んでいるのに仕組みは変わっておらず、負担を感じる人が増えている」と大和総研(東京)の研究員、矢沢朋子さんは指摘する。
地域活動の担い手が女性に偏る構図も変化しない。総務省の社会生活基本調査(2016年)を基に矢沢さんが分析したところ、「子どもを対象としたボランティア活動」に携わるのは、共働き世帯の夫で11%だったのに対し、妻は26%に上った。
市場調査会社「かんでんCSフォーラム」(大阪)の調査(16年)によると、PTA委員・役員の経験があるフルタイムで働く女性が活動期間に困ったこと(複数回答)は、「仕事や家事等との、時間の調整が難しい」が最多。「連絡の方法や、運営のやり方が効率的ではないと感じる」が続き、働きながら活動しにくい状況がうかがえる。
メールで連絡
共働きでも関わりやすいよう、負担を減らす工夫も広がる。
分譲から10年になる兵庫県芦屋市涼風町地区。2年前に発足した自治会には会費も回覧板もない。行政情報はメールで配信。負担感がある定例会議を廃止した代わりに、議題の多くをインターネットの掲示板上で採決する。
活動の中心は30~50代の共働きや子育て世帯で、地区内の半数近い約170世帯が加入する。会長の孝岡知子さんは「今月の台風災害では、住民同士で周辺の浸水状況や炊き出しなどの情報をメールで素早く伝え合えた」と話す。
京都市立陵ヶ岡小PTAは5年前、役員だけで行ってきた夏祭りなど行事の準備を、保護者全員に呼びかけ、希望や都合に応じて参加してもらう「お手伝い制」を導入した。
大阪府交野市の市立第二中学校区には、地域住民がPTAを支える「 親地 の会」がある。卒業生の父母ら30~80代の約90人が「地域の親」として活動。児童生徒の登校を見守るほか、中学生に土曜日の自習の場を設け、小学校の運動会で警備を行う。「子どもたちとのやりとりが楽しい」との声も聞かれる。
自らも共働きで、PTA会長の経験がある代表の 亥埜 誠治さん(49)は「教育や地域のことは誰かがやるだろうと敬遠せず、しっかり関わる大人の姿勢を子どもたちに示したい」と語る。
助け合いの場
「親も子も孤独にならず、助け合える場が子ども会なんだと改めて実感した」
堺市西区鶴田町では、「少子化で世話役の親が減って負担が重い」と休止した子ども会を、共働きの母親らがこの夏、7年ぶりに復活させた。
休止中、通常は子ども会単位で出場する駅伝などの行事に子どもたちが参加しづらくなった。会長の杉田忍さん(41)たちは「親が無理しない形で、子どもにまた楽しい体験をさせてやれないか」と模索。「それぞれが時間のある時にやれることをすればいい」という考え方を浸透させるように心がけたという。
復活を知り、町内の男性から「工作を教えたい」と協力の申し出があり、老人ホームが活動場所に部屋を貸してくれた。「子どもたちが遊ぶ姿に親がほほ笑み、周りの人も喜んでくれる。地域に笑顔をもっと広げていけたら」と杉田さんは話している。
(第3部おわり。久場俊子、辻阪光平、藤本綾子が担当しました)
<連載への感想や体験談をお寄せください>
〒530・8551読売新聞大阪本社生活教育部「共に働く」係へ。ファクス(06・6365・7521)、メール(seikatsu@yomiuri.com)でも受け付けます。ツイッターは https://twitter.com/o_yomi_life_edu。
【関連記事】