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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

ベンゾジアゼピン離脱症候群……依存性への意識が遅れた日本

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 前回、向精神薬の影響が目に表れる「ベンゾジアゼピン(以下ベンゾ)眼症」について書きました。1960年代に出現したベンゾ系薬物は、80年代ごろからその依存性や、依存性からの脱却のために服薬を中止することで出現する「離脱症候群」が、欧州を中心に医学的大問題になりました。今世紀になると反省期に入り、ベンゾ系は短期間に限って使うべき薬物として定着してきます。これに対して日本は意識が遅れ、ここ数年、やっと反省期に入った気配がみえたところです。そこで今回、やや専門的にはなりますが離脱症候群を取り上げます。

脳の神経回路の誤作動で様々な症状 目は光過敏や眼痛など

ベンゾジアゼピン離脱症候群……依存性への意識が遅れた日本

 離脱症状には、それまでの症状が悪化するだけでなく、新たに振戦(手足首などの震え)、不穏、無力感、集中力低下、発汗、めまいなど様々な症状がみられます。

 目に関しては、異常なまぶしさ、光過敏、光への恐怖や眼痛です。眼球に病気が出現したからではなく、脳の感覚系神経回路の誤作動で生じた中枢性 羞明(しゅうめい) と考えられます。

 この光過敏と同一線上にある感覚過敏として、音、味、臭い、触覚、さらには体の種々の部位にしびれや痛みが出現することが指摘されています。感覚過敏は、ベンゾ長期投与後の離脱にかなり特異的な症状のようです。

 本症候群には、急性の離脱症状が起きて数週間から数か月以内に改善するものと、遷延性離脱症候群という1年以上にわたって症状が持続するものがあります。中には進行し、半永続的に症状が残る例もありますが、日本では認識が薄く、「離脱症候群」は改善するはずと信じている臨床医も結構います。

 ベンゾ系薬物離脱後に羞明や目の痛みがひどくなり、生活上、本来必要な光の存在さえも邪魔になり、光をできるだけ避けて生活せざるを得ず、しかも、それが何年経過しても改善なく、むしろ悪化してゆく患者を私は10例以上経験しています。

 それらの患者は、線維筋痛症や慢性疲労症候群に類似する症状を持つ場合もあり、これも離脱症候群の一部ではないかと私は疑っています。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」(青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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