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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

コラム

松永正訓緊急寄稿「死にたい。でも、死ぬ方法が分からない…と泣いたわが子は性同一性障害」 杉田議員擁護の雑誌特集に涙し

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 自民党の杉田水脈衆議院議員が「LGBTは生産性がない」と述べたり、杉田議員の論文を擁護する「そんなにおかしいか」という特集を月刊誌「新潮45」が組んだりしています。

 LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の人たちは、趣味で性的マイノリティーを選んでいるわけではありません。生まれた時から、そういう個性を備えているのです。今回は、番外編としてトランスジェンダー(性同一性障害)の子について書きます。

最後のスカート姿は小学3年生

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 私たち夫婦の次女の名前を、仮にヒカリとしておきます。ヒカリは、ごく普通の女の子として生まれ育ちました。小学校低学年の時は髪の毛を長く伸ばしており、毛先が背中までありました。私がヒカリの最後のスカート姿を見たのは、小学3年生だったと思います。この頃、髪の毛をショートにしました。

 小学3年生の終わり頃、第2次性徴が始まりました。月経に伴い気分不快、いらだち、不安感、腹痛が強く、泣き出してしまいました。私はこの状態を月経前症候群ではないかと考えて、某病院の婦人科に連れて行きました。しかし婦人科の先生は「こんな小さい子に月経前症候群などない」と言って、ヒカリを小児科に回しました。小児科の先生は時間をかけ、本人のつらさに耳を傾けてくれましたが、問題は解決しませんでした。今考えると、この時が、心と体のズレの始まりだったのだと思います。

胸にサラシを巻いて学校へ

 小学校高学年になり、ヒカリは男の子のような服装になりました。私は後で知ったのですが、妻には「女の子でいることがイヤだ」と打ち明け、胸にサラシを巻いていたそうです。

 クラスの仲間は、そんなヒカリを受け入れてくれました。男女別に整列する時は、必ず両者の間に並んだそうです。担任の教師もそれを認めてくれました。ただ、女子トイレにも、男子トイレにも入りませんでした。帰宅するまで我慢していたのです。

個性を理解してくれた中高一貫校

 電車とバスを乗り継いで1時間ほどの、中高一貫校に進学することになりました。ここで大きな問題が起きました。制服です。

 「どうしてもスカートをはけない」と、ヒカリは悲しい顔になりました。この時点で妻は、ヒカリの性同一性障害に気付いていました。しかし私は、単に男の子っぽい女子としか認識していませんでしたので、かなり動揺しました。

 ヒカリは、これまで女子として生きてきたことがとてもつらかったと、私の前で涙を流しました。お風呂に入る時、鏡で自分の胸を見ると悲しみがこみ上げてくるそうです。心と体がバラバラで、「こんなことなら死にたい。でも、死ぬ方法が分からない」とさえ思ったそうです。「死」という言葉が自分の子どもの口から出て、私は胸が強く痛みました。

 中学校入学にあたり、私たち夫婦は学校側と話し合いをしました。学校ではこれまでに、性同一性障害の生徒を受け入れた経験がないそうです。しかし、理解はありました。ヒカリには詰め襟の学生服を着用させ、学籍番号は男子に加えるという判断でした。つまり完全に男として扱うということです。

 ただ一つだけ困ったことがありました。トイレです。これに対しても、学校側は校舎の奥にある誰も使わないトイレを、ヒカリ専用の「男女共用」のものにしてくれました。

 入学式の後の学年集会で、校長先生が「この学年には性同一性障害の子がいる」と説明してくれました。ヒカリのクラスでも、始業日に同じ旨の話がありました。こうしてヒカリは、男子として中学生活を始めました。滑り出しは順調でした。

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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

 生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます。

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松永正訓(まつなが・ただし)

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster Prizeなど受賞歴多数。2006年より、「 松永クリニック小児科・小児外科 」院長。

『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』にて13年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。2018年9月、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中央公論新社)を出版。

ブログは http://wallaby-clinic.asablo.jp/blog/

名畑文巨(なばた・ふみお)

1958年、大阪府生まれ。外資系子どもポートレートスタジオなどで、長年にわたり子ども撮影に携わる。その後、作家活動に入り、2009年、金魚すくいと子どもをテーマにした作品「バトル・オブ・ナツヤスミ」でAPAアワード文部科学大臣賞受賞。近年は障害のある子どもの撮影を手がける。世界の障害児を取材する「 世界の障害のある子どもたちの写真展 」プロジェクトを開始し、18年5月にロンドンにて写真展を開催。大阪府池田市在住。

ホームページは http://www.fumionabata.com/index.html

名畑文巨ロンドン展報告

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3件 のコメント

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読んで思ったこと

読売読者

日本精神神経学会の「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」を読むとホルモン療法の年齢引き下げがあったのでヒカリさんに適用できるかは認定医...

日本精神神経学会の「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」を読むとホルモン療法の年齢引き下げがあったのでヒカリさんに適用できるかは認定医や主治医とよく相談されてみてはどうでしょうか。骨端線が消失しているかなども相談してみれば今後身長が伸びるかどうかなどの参考になると思います。現在は体は女性だということですので日本思春期学会員の産婦人科の先生に相談されるとよい指導をしてくれると思います。現在女性の体で女性が好きになった場合ですが、yomiDr.内の「虹色百話~性的マイノリティーへの招待、第8話 性同一性障害はトランスジェンダーの訳語ではない」https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20150820-OYTEW55139/ で「FTMの人と女性とのカップルは、レズビアンカップルに見えても、本人の内心ではヘテロセクシュアルなのかもしれません。」と書かれています。
さて話題の議員のことですが、5つの在日外国商工会議所が異例の共同記者会見で「むしろ、LGBT支援が進めば日本の生産性が上がる」と発表されているので特に議員発言にこだわる必要などないのではと思います。あと、議員発言を否定するとき言論に対しては言論で在日外国商工会議所のような提言で医師やジャーナリストはして欲しいです。

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松永さんのお話

読者

松永さんのコラムを良くネットで拝見しております。 松永さんの、現在の小児医療の問題に対する憤りや葛藤、小さな命を救いたいという熱い思いが文章から...

松永さんのコラムを良くネットで拝見しております。
松永さんの、現在の小児医療の問題に対する憤りや葛藤、小さな命を救いたいという熱い思いが文章から伝わり、読む度に心を打たれます。
そして、自身が生まれた時から命に関わる大病にかかることなく成長出来たのは、ありがたい事だと想いました。

私自身はLGBTでは無いのですが、LGBT の方々が差別されることが許せません。様々な多様性が普遍的になっている現代で、なぜ性に関する多様性が認められないのでしょうか?
また、LGBTとマイノリティを括ることも実は差別的な表現なのではないかと考えます。
今は差別問題を提議するためにも必要な表現だと思いますが、将来的には、例えば血液型と同様に【正しい表現ではないかも】、それぞれ違って当たり前になって欲しいです。

私は、余りにも浮いた話が無いので親から『性的マイノリティでも隠すことないぞ、子供の幸せが親の一番の幸せだからな』と言われたことがあります。
もし、自身の性のあり方で悩んでいる方が、理解ある親からこういった言葉を投げ掛けてもらえたなら、本当に救われた気持ちになるのではと思いました【私は嬉しいような、嬉しくないような複雑な気持ちになりましたが・・・】

ヒカリさんの言う様に、本当にツラいのは誰にもカミングアウト出来ず、独りで抱え込んでいる方だと思います。
メディア等でLGBTについて差別的なマイナスのイメージを払拭できれば、カミングアウトしやすくなり、潮流がよい流れに変わるのではないでしょうか。

ヒカリさんを初め、同じような悩みを抱えている方々が、幸せに暮らせる社会になるように願っています。

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きっと居心地の良い場所が見つかります

みんな人間

ヒカリさんの苦悩を想像し本当に胸が痛みます。 私自身、国会議員の発言、雑誌の擁護記事のことをニュースで見て、非常に残念に思いました。 私は海外の...

ヒカリさんの苦悩を想像し本当に胸が痛みます。

私自身、国会議員の発言、雑誌の擁護記事のことをニュースで見て、非常に残念に思いました。

私は海外の国際機関に勤務していますが、私の周りにはいろんな国からのLGBTの同僚が沢山いますし、普通に同性のパートナーのことを自由に話せる職場環境です。同僚に聞くと、やはり若い頃はいじめられたり、差別されたりして、非常に辛かったとのこと。でも、いまは、心を許せる仲間をみつけ、差別の少ない職場環境にいます。私の一番信頼しているLGBTの同僚は、事務所のブレーン、経済学者として多くの人から非常に尊敬されています。

今は、社会的プレッシャーも強い上、周りにも心を許せる仲間が数少ないかもしれませんが、状況はきっと変わりますし、居心地のいい場所が見つかるはずです。

ヒカリさんや多くの人の苦しみや悩みを理解し、少しでも生きやすい社会になってくれればと願うばかりです。

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