いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち 松永正訓
医療・健康・介護のコラム
腸が飛び出た腹壁破裂を出生前のエコー検査で発見 二つの手術室を確保し、帝王切開後すぐに全身麻酔で…
赤ちゃんの腹壁異常には、 臍帯 ヘルニアと腹壁破裂という二つの疾患が含まれます。前者は臍帯(へその緒)から腸が飛び出し、後者はへその脇の穴から腸が飛び出すという違いがあります。臍帯ヘルニアでは、腸だけでなく肝臓も飛び出ていることがあります。どちらにしても、こういった赤ちゃんが町の産院で生まれると、大学病院へ搬送するまでの間に、赤ちゃんが低体温になったり、腸に感染が起きたりする危険があります。
生まれてからの搬送では低体温の危険も
大学病院に到着した時点で、体温が36度を下回っていることも珍しくありません。低体温になると、血液は酸性に傾きます。酸性になると、赤ちゃんの呼吸や血液の循環は悪化していきます。そうすると、さらに血液が酸性になっていきます。赤ちゃんの低体温は、命に関わる重大なリスクなのです。この状態に感染が加わると、一気に全身状態が悪くなり、生命の危機に 瀕 することになります。
従って、腹壁異常の赤ちゃんが搬送されてくると決まった時は、私たちは処置室の中を暖房で暑苦しいくらいに暖めます。シンクに熱いお湯を張って、その中に生理食塩水と消毒液のボトルを入れて、中味を温めます。
救急車のサイレンが聞こえてきたら、 沐浴 用の 盥 の中に生理食塩水と消毒液を入れて、消毒風呂を作ります。
消毒風呂で腸を洗い、体を温めてから手術
赤ちゃんが到着すると、小児外科医は、手術をする時と同じように滅菌手術着を身にまとい、滅菌手袋を着用します。飛び出ている腸に素手で触れて、感染を引き起こさないようにするためです。
そして、赤ちゃんを抱っこして消毒風呂に浸します。時々、体温を測って、直腸の温度が37.5度くらいまで上昇するのを待ちます。飛び出ている腸を消毒液で洗いながら、体全体を温めていくのです。
こうした処置で全身状態が良好になれば、手術室に電話を入れて緊急手術に臨み、飛び出ている腸をおなかの中に収めます。この間、赤ちゃんは生命を脅かされ続けることになります。
しかし、出生前に診断が付けられていれば、こういうプロセスはすべて不要になります。
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