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北海道地震で大停電「酸素もたない」…自宅の患者、医療機器停止で窮地

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北海道地震で大停電「酸素もたない」…自宅の患者、医療機器停止で窮地

加藤さんの元に届けられた自家発電装置

 最大震度7を観測した北海道地震から2週間が過ぎた。政府などによる節電要請はようやく解除されたが、地震発生後に道内全域で起きた長時間停電は、電気を必要とする酸素濃縮器が欠かせない患者の命を脅かした。民間の支援団体などが船や飛行機で北海道に発電装置や酸素ボンベを届けたが、道や札幌市は緊急時にこうした機器が必要な患者を支援する態勢を取っておらず、課題を残した。

残り数時間

 「酸素が尽きれば、病気が悪化してしまう」。地震翌日の7日、札幌市手稲区の加藤 美津紀みづき さん(40)は焦燥感に駆られていた。

 長女の結衣さん(10)は慢性心不全などを抱え、就寝時には酸素濃縮器が欠かせない。停電で機器が止まった6日未明、加藤さんは結衣さんの鼻につなげるチューブの注ぎ口を非常用の酸素ボンベに切り替えた。

 だが、電気は翌朝も復旧せず、結衣さんの体調は悪化し始めた。「停電がこんなに長引くなんて」。非常用ボンベの残量は数時間分しかなかった。

 手を差し伸べたのは、医療的ケア児を支援する団体だった。一般社団法人「全国重症児デイサービス・ネットワーク」(名古屋市)に加盟する仙台市の団体が、自家発電装置6台を苫小牧港へフェリーで運んだ。LINE(ライン)を通じてそれを知った加藤さんは、停電から1日半たった7日午後、発電装置を受け取り、胸をなで下ろした。

 同法人の鈴木由夫代表理事(67)は「行動が遅れれば命取りだった。支援団体同士、普段から連絡を取り合っていたので迅速に連携できた」と話す。

自衛隊が空輸

 東京都文京区の医療機器レンタル会社「フクダライフテック」は6日午後、厚生労働省にメールで北海道への酸素ボンベの緊急配送を要請した。

 同社が酸素濃縮器を貸し出す道内患者のうち、重症患者約250人は、停電で酸素ボンベが必要となった。ところが、ボンベに酸素を補充する道内の工場は停電で大半が停止。道内にあるグループ会社の社員は非常用電源で稼働する一部工場と患者宅を行き来し、ボンベに酸素を補充した。

 要請を受け、政府の災害対策本部は航空自衛隊に緊急配送を指示。仙台市に集積された300本のボンベは8日夕、千歳市まで空輸された。この頃、道内の停電はほぼ解消されたが、同社営業担当の栗原節也次長(51)は「停電がさらに長期化していれば危なかった」と振り返る。

全国で15万人

 厚生労働省によると、酸素濃縮器の利用者は全国で約15万人。道内では約7000人に上るが、北海道地震では、道や札幌市は利用者数や所在を把握していなかった。

 安否確認ができなかった札幌市は「停電が長引くことは想定外だった。今後は情報把握に努めたい」(市保健所)。道もメーカーの協力を得て安否確認を進めるにとどまり、「当時の対応が適切だったか、検証したい」(健康安全局)としている。

 災害医療に詳しい神戸学院大の中田敬司教授は「自治体は障害者ら災害弱者の所在を把握し、病院や福祉施設と連携して非常時に素早く対応できる態勢を整えておくべきだ」と話す。

 一方、一般社団法人「日本難病・疾病団体協議会」の伊藤たてお理事会参与は「全電源が一斉にダウンすれば自治体も混乱するのは当然で、対応する余力があったのかは疑問だ。だからこそ、自治体には、日頃から患者に医療機器の予備バッテリーや自家発電装置を貸し出すなどの仕組みを構築しておくことが求められる」と指摘している。

          ◇

【酸素濃縮器】  空気中の酸素を濃縮する医療機器で、肺気腫や筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)など呼吸をする力が弱い患者が、チューブで鼻につないだり、酸素マスクにつないだりして使用する。

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