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樹木「クロモジ」の成分がインフルを予防か

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樹木由来成分「クロモジ」がインフルを予防か

 日本では毎年、季節性インフルエンザが流行し、1,500万人程度が罹患しているという。感染の予防にはワクチンの接種が推奨されているが、ウイルスは毎年少しずつ変化しているため、完璧に予防するのは難しい。そうした中、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター(愛媛県東温市)の伊賀瀬道也センター長らが、人を対象に試験を実施。クロモジという樹木に含まれる抗ウイルス作用を持つ成分が、インフルエンザの感染予防に有効である可能性を示した。詳細は、医学誌「薬理と治療」(2018; 46: 1369-1373)に掲載されている。

クロモジエキス摂取群で罹患率が低下

 クロモジは日本の山地に自生するクスノキ科の落葉低木で、樹皮に黒い斑点がある。枝には甘い香りがあり、皮付きのまま削り高級楊枝として利用される。また、蒸留によって採取される精油も有名だ。

 インフルエンザウイルスは、主に鼻や喉から感染し、細胞内へ素早く侵入して増殖するが、クロモジエキスに含まれるポリフェノール「プロアントシアニジン」には、ウイルスへの感染後にその増殖を抑える作用のあることが、これまでの研究で明らかにされている。また、ウイルスの表面に直接接触して膜を破壊し、感染力を失わせることも報告されている。

 今回、研究グループは、クロモジ成分のインフルエンザ予防効果を人で検討するため、愛媛大学医学部附属病院に勤務する看護師など合計134人を対象に比較試験を実施した。対象者を、クロモジエキスを67mg配合したあめをなめる67人と、非配合のあめの67人に分け、1日3回、12週間にわたり毎日摂取してもらった。この対象者は全員、インフルエンザワクチンを接種していた。

 その結果、インフルエンザにかかった人は、クロモジエキス配合群で 2人(3%)、非配合群では9人(13%)と、クロモジエキス配合群でインフルエンザの罹患率が明らかに低かった。

 対象となったのは厳しい体調管理が求められる看護師などであり、全員がワクチンを接種していたが、数人がインフルエンザに罹患した。しかし、クロモジエキス配合のあめをなめた集団では、非配合の集団に比べ明らかに罹患率が低かった。この結果について、研究グループは「あめでの摂取が奏功した可能性がある」と分析。その理由を「あめをなめている数分間、クロモジエキスに含まれるプロアントシアニジンが咽頭部にとどまることができるからだ」と説明した。さらに「インフルエンザ予防策の1つとして、クロモジの活用が考えられる」と期待を寄せた。(あなたの健康百科編集部)

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