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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

コラム

審議重ね、意を決して出発…認知症の父さんとの外食は大事業?

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実は認知症の人に優しいファミレス…でも行きたいのはソコじゃない!

 ファミリーレストランなどはさまざまな年齢の人が利用するので、バリアフリーであったり、隣のお客さんの目が気にならない広めのテーブル席があったり、父さんと一緒でもあまり問題なく過ごせます。でも、元グルメ(?)だった父さんの行きたいお店は、残念ながらそこではありません。

 父さんが元気だったころの記憶から「行きたい」と挙げるお店は、カウンターだけだったり、地下にあるお店だったりと、かなり難度が高そうなところばかり。それでも、父さんの思いをかなえようと私が切望し、母さんと審議した結果、あそこならば店内も広いし、テーブルとテーブルの間隔も離れているので、比較的他の人の目も気にならないという中華料理屋さんへ「よし、いくぞ~!」ということになりました。

 我が家だけかもしれませんが、認知症の父さんと外で食事をするというのは、かなりの覚悟を要します。

おいしい料理と“神対応”に涙

 意を決してお店に行くと、父さんの様子を察したお店の人が一番広いテーブルに案内してくれました。そして料理が運ばれると、食事をする父さんは案の定こぼしまくり、ついには素手で食べ始めました。

 そんな父さんに、スタッフが「どうぞ!」とさりげなくおしぼりを2本渡してくれました。かなりの神対応です。さらに、お店を出るときに「こんなにこぼしてしまって、ごめんなさい」という私たちに「お気になさらず」と笑顔で送り出してくれました。料理のおいしさはもちろんですが、素晴らし過ぎる接客に感動して泣きそうになったことを覚えています。

おしぼりを多めに頼むと…

 残念ながら、現在は認知症と手足のマヒが進み、外食はかなり難しくなってしまいました。それでも父さんの飽くなき食への情熱をかなえてあげようと、テイクアウト可能なレストランのお料理を家で楽しむこともあります。

 そこでよくあるのが「おしぼりをいくつ入れますか?」という質問です。私は、申し訳ないなと思いながらも父さんのことを考え、いつも2、3本多めに申し出ます。そんなとき、けげんそうな顔をする店員さんに出会うことも少なくありません。混んでいる店頭で、「父が認知症で……」と説明するわけにもいかず、店員さんが違和感を抱いたとしても無理はないのですが。

 本当にちょっとしたことかもしれませんが、認知症の人やその家族は、たとえば、お店のスタッフの気遣いに涙するほど感動したり、その逆には心が痛んだり。ささいなことで心が揺れてしまうのも、「認知症介護あるある」なのかもしれません。(岡崎杏里 ライター)

 登場人物の紹介はこちら

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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