心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
コラム
向精神薬による目の異常「ベンゾジアゼピン眼症」の提唱
早めに薬物から離脱できれば改善、完治も期待
私たちは、このような感覚症状があり、ベンゾジアゼピン系薬物を常用している場合をこの論文で「ベンゾジアゼピン眼症」と呼ぶことを提案しました。これは、おそらく眼瞼けいれんの予備軍ですが、その時点で薬物の離脱がうまくできれば、かなりの程度改善し、場合によっては完治も期待できます。
もし、眩しい、ぼやけるなど見え方の異常を感じた時、睡眠導入剤などを使っていないか考えてみてください。処方している医師は、関連に気づかないか、気づいても軽く見るかもしれませんので、神経眼科医など理解してもらえる医師を探して相談してください。
以前、「朝起きた時、視界が白っぽくぼやけることがある」と訴える50歳代の女性患者さんを診察しました。目には異常は見つかりませんでしたが、睡眠導入剤を常用していたことから、「週に何回か使わない日を設けて、翌朝の見え方を比べてみてください」と助言しました。
次の来院で彼女は、「先生、おっしゃるとおり、あの見え方は睡眠導入剤のせいでした。そう気づいたので、以来ほとんど使っていません」と笑顔で話しました。
その後も似た経験をした方を何人か診察し、「ベンゾジアゼピン眼症」の存在に、一層自信を持ち、今回の研究成果につながりました。
(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
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