子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
不慮の事故(9)販売中止の玩具 使わないで
不慮の事故では、小児科医で緑園こどもクリニック(横浜市)院長の山中龍宏さん=写真=に聞きます。(聞き手・萩原隆史)
浴槽で事故が相次いだ乳幼児用の浮輪について、生後6か月の乳児を模した人形を使い、科学的な検証を行いました。
浮輪は船と同じように、ある程度傾いても復元力が働き、転覆しません。ところが身を乗り出すと、25~30度傾いたところでひっくり返ることがわかりました。足を浮輪に通している子どもは、浮輪と一緒に裏返り、浴槽内で逆さ宙づり状態になってしまいます。
さらに、詳しい画像解析の結果、転覆開始から2秒足らずで逆さ宙づりになることが判明しました。まさに「あっ」という間の出来事。あまりに危険性が高いといえます。
そもそも、重心が浮輪より高い位置にあることが危険の本質です。浮輪がわきの下や肩の位置にくる仕組みなら、こんな危険な転覆は起きません。事故が相次いだ浴槽用浮輪については、業界団体が2007年、安全な玩具を示す「STマーク」の対象外とし、国内メーカーが製造・販売を自粛しています。
問題は、店頭で販売されなくなった製品や、似たタイプの浮輪の事故がその後も発生していることです。例えば、母親が友人から便利だと聞いて借りた浮輪で生後9か月の女児が溺れたという事故は、調べてみると、かつて事故を起こしたものと同じ製品でした。
事故が絶えないのは、インターネットで類似製品が購入でき、ネットオークションでも取引されているからです。知人から借りた子ども用品や、譲り受けたおさがりの中に、かつて問題になった危険な製品が含まれていることもあるでしょう。
この浮輪に限らず、死亡や重症化につながるリスクが高い製品については、規制のあり方を見直す必要があるといえます。
【略歴】
山中龍宏(やまなか・たつひろ)
1947年、広島市生まれ。小児科医。東京大医学部卒。子どもの事故防止に取り組むNPO法人「セーフ キッズ ジャパン」(東京)理事長、消費者庁の消費者安全調査委員会専門委員。
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