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医療・健康・介護のコラム
「小学生の腰痛」「女子の食事制限」が危ない…スポーツ医学の学術集会で警鐘
大坂なおみ選手のテニス全米オープン初制覇、感動しましたね。その素晴らしいプレーもさることながら、インタビューやその言動でも世界の注目を集めました。
さて、今回は、9月7~9日に徳島市で開かれ、私も参加した日本整形外科スポーツ医学会学術集会の話をさせてください。
スポーツ医学は日進月歩で発展していますが、その成果は学会や論文で報告され、普及していきます。一般の方には、学会など遠いところでの話と思うかもしれませんが、情熱あふれるドクターやメディカル関係者との懸け橋になれるよう、発信していきたいと思います。
「100%を超える復帰」へ スポーツドクターの情熱
学術集会は、大学や病院単位で行った研究の成果報告や、複数の専門家があるテーマについてディスカッションするシンポジウムなどがあり、学問の発展には欠かせません。日本整形外科スポーツ医学会は1975年に第1回の集会が行われ、今年で44回目の開催です。整形外科・運動器領域におけるスポーツ医学の進歩に寄与してきた歴史ある学会です。
今回は、徳島大学の西良浩一教授が会長で、会場はアスティとくしまでした。時間帯によっては異なる会場で同時に発表が進行するため、聞きたいテーマを選ぶのに迷います。ある時間帯を例にとると、肩、股関節鏡手術、女子トップアスリートのサポート、脊椎手術、足関節のスポーツ外傷、メディカルチェック、前十字 靭帯 損傷の手術といったテーマが発表されていました。
学会のテーマは「情熱と覚悟~100%を超える復帰~」。けがや故障から100%の状態に戻すことを大前提として、さらに受傷前以上の状態にし、二度と再発しないようにしてフィールド復帰を目指すという西良先生の熱い思いが伝わってきます。そのためには、ドクターだけでなく、理学療法士、アスレティックトレーナーなどの連携が重要です。これまで本学会に来る人の多くは整形ドクターでしたが、今回は理学療法士やアスレティックトレーナーなどのコメディカルの参加者が40%を超えたということで、西良先生の掲げたテーマが多くの人たちに伝わったのだと思います。
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知人女医が産婦人科専門医の上のヘルスケア専門医を取得したそうです。 思春期や更年期の問題もよく勉強したそうで、特に女子選手への関与の部分で整形外...
知人女医が産婦人科専門医の上のヘルスケア専門医を取得したそうです。
思春期や更年期の問題もよく勉強したそうで、特に女子選手への関与の部分で整形外科医との協力も期待されます。
教育の半分は理論より暗記というか宗教的な部分もあり、多くの患者さんのために、細かい理論よりも大まかな実践的な理屈を普及させるために資格や権威が効果的な部分もあります。
実際、最多の問題であるオーバーユースと過剰なダイエットをやめさせるのには細かい理屈や医療以前の問題のようにも思えます。
実績にしても能力にしても「○○歳までに○○を」へのこだわりの弊害ですね。
むしろ、社会形成や選抜育成システムの見直しも含めて、医療サイドから指導者や協会にどう働きかけるかの問題も絡みます。
プロの社会形成も絡みますが、アジア人の遅い成長曲線の中で、欧米並みに早熟選手ばかり選抜するよりもセカンドキャリアの準備を含めて、より大きなプレーチャンスと学習のパイを作るほうが指導者層や協会にも経済メリットが多いので考えるべき点です。
特に育成年代における「分かち合い」や多様性の側面を「奪い合い」やチーム統制よりも強化した方が厚みのある人材育成にも有用です。
冒頭の話に戻りますが、いま主力を担う整形外科医の方々からコメディカルだけでなく、他科医にもスポドクチームへの誘いの手を差し伸べてほしいですね。
今は情報インフラも整ってますから、海外チームに移籍した選手を支えるのに内科医や放射線科医などの重要性も増しています。
僕が整形外科医を選ばなかった理由の一つはサッカードクターセミナーで能力とやる気に溢れた整形外科医を沢山見たので、ポジションを変えようと思ったからです。
不必要な怪我や病気を減らし早期発見により重症化を防ぐために整形外科医やコメディカルも含めて日常と総合臨床、総合臨床と各科臨床の幅をどう埋めるか考える必要があります。
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スポーツの意義の見直しと普及のための施策
寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受
同日程のMRI学会に参加のため行けませんでした。 小学生の腰痛も女子の過度のダイエットによる月経異常もつまるところは目先の結果にフォーカスしすぎ...
同日程のMRI学会に参加のため行けませんでした。
小学生の腰痛も女子の過度のダイエットによる月経異常もつまるところは目先の結果にフォーカスしすぎたオーバーワークの産物です。
進学校だと逆に部活の時間への制限がつくところも多いですが、さじ加減は非常に難しいものがあります。
100%以上の復帰に関しては異論があります。
一定以上の損傷はおそらく回復に限界があります。
しかしながら怪我を通して競技や肉体と向き合うことで、より深い洞察や動作が可能になるのだと思います。
言い換えれば「それまで100%と信じてきたことは100%ではないということを認めて進歩する」ことが敗北や怪我という大きな挫折の先にあるのが我々凡人なのだと思います。
だからこそ、大怪我を乗り越えてプレースタイルを変えても輝く選手が沢山います。
自分は公式記録ではあまり輝いていませんが、マンマークとカバーリングのいわゆる守備職人だった20年前の自分が、後にドリブルデザイナーと引き分ける未来を知ったらびっくりすると思います。
25歳過ぎたあたりからコツがわかってきてうまくなりました。
プロやアマの大会の制約はあれど成長の速度も偏りも人それぞれで楽しみ方の多様化も進むべきでしょう。
体育やプロ興業だけではなく、教育や生きがいや繋がりとしてのスポーツの側面が徐々に広まればと思います。
それは文化や産業を進歩させるエネルギーになると思います。
物理の問題だってボールを投げたり蹴ったりした経験があれば理解も速いでしょう。
物理や解剖学・生理学がだいたい分かっていると同じ身体能力でのボディコンタクトも強くなります。(勉強熱心なベテランがうまくなる理由)
そういう共通理解の普及には時間もかかりますが、スポーツ産業を発展させるためにも子供が致命傷を負ったりスポーツを嫌いにならないように環境や啓発活動を整えていくべきですね。
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