文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

ニュース

ニュース・解説

治療痕一致「舞樺ちゃんです」…住民診てきた歯科医が歯型鑑定

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
治療痕一致「舞樺ちゃんです」…住民診てきた歯科医が歯型鑑定

亡くなった住民らの歯型の鑑定を続けた呉さん。院内には滝本舞樺さんが描いてくれた絵が残されていた(11日、北海道厚真町で)=竹田津敦史撮影

 北海道で6日未明に起きた地震の死者は41人に上り、このうち36人は大規模な土砂崩れが起きた 厚真あつま 町で命を落とした。町内で長く住民たちを診てきた歯科医の くれただし さん(64)は、高校1年生の滝本 舞樺まいか さん(16)ら18人の歯型を調べ、身元の確認にあたった。地震発生から13日で1週間。住民たちの最期に向き合った心境を、呉さんが語った。

 白く健康的な歯が並ぶ。上の歯が一つだけ内側を向いていた。2年前、呉さんが経営する厚真歯科(厚真町本町)を訪れた時に舞樺さんが気にしていた歯の特徴と、一致していた。

 「削ってきれいにしてほしいな」という年頃の女の子らしい願いに、「お父さんのOKが出れば、やってあげるよ」と答えたのを、呉さんは覚えている。

 激しい揺れに見舞われた6日の未明。歯科の隣にある呉さんの自宅も花瓶が割れ、食器棚が倒れた。土砂崩れが起きたことはラジオで知った。警察官2人が歯科を訪れたのは、その夜のことだ。遺体の歯型鑑定の依頼だとすぐわかったが、2人から「滝本舞樺さんを知っていますか」と聞かれ、血の気が引いた。

 舞樺さんのカルテを取り出し、呉さんは遺体安置所となっていた町の児童会館へ歩いて向かった。中に入ると、大勢の警察官に囲まれたベッドの上に、タオルで顔を覆われた遺体が横たわっていた。たまらなくなり、顔を後ろにそむけて声をあげて泣いた。20秒ほどそこで立ち止まり、深呼吸を繰り返した。そして、「これは仕事だ」と自分に言い聞かせ、遺体のそばに寄り、口の中を見た。

 上の歯の特徴だけでなく、2年前に自分が手がけた虫歯の治療痕も確認した。「ほぼ100%、舞樺ちゃんです」と、警察官に伝えるしかなかった。

舞樺さんが描いた自分の似顔絵、歯科医の待合室に

 台湾出身の呉さんは、1980年に来日した。歯科医の免許を取得し、90年5月、当時は町立だった厚真歯科に赴任。住民たちは親切で、すぐにうち解けた。町に求められ、妻の友子さん(63)と永住を決意。自営の歯科に衣替えした。隣に一軒家を建てた時は、地域の人たちが食べきれないほどの野菜を持って来て祝ってくれた。待合室は患者だけでなく、バスを待つ高齢者や、学校帰りの子供たちでいつもにぎやかだった。

 舞樺さんが初めて歯科に来たのは小学校入学前。父の卓也さん(39)に連れられ、兄の治療が終わるのを待っていた。小学校に上がってからは、友人たちとやって来ては待合室でおしゃべりしたり、絵を描いたりと元気いっぱいだった。

 2年前の8月。舞樺さんは14歳になっていた。数日間にわたった治療中のある日、待合室の机に絵が残されていた。七三分けに眼鏡の男性が目を細めて笑っている姿を見て、呉さんはすぐに自分の似顔絵だとわかった。横には「マイカ」と読めるサインが添えられていた。

 みんなに見てもらいたくて、待合室に目立つように飾った。「ありがとう。才能あるよ」とお礼を言うと、舞樺さんは照れ笑いを浮かべた。舞樺さんが歯科を訪れたのは、これが最後となった。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

ニュースの一覧を見る

最新記事