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医療・健康・介護のコラム
あなたはその降圧薬で大丈夫?…高血圧に二つのタイプ、効く薬も違います
高血圧には「ギュウギュウ型」と「パンパン型」が
桑島医師は、「日本の多くの高血圧患者、特に高齢者にはARBは適していない」と言います。この薬が効きにくいタイプの高血圧が多いからです。
高血圧には、二つのタイプがあります。血管が収縮して狭くなるタイプと、血液の量が増えるタイプです。桑島医師は、それぞれを「ギュウギュウ型」「パンパン型」と呼んでいます。前者は、血管が狭くなって外からギュウギュウ締め付けるから、後者は血液量が増えて血管を内側からパンパンに広げるのが、その名の由来です。
ギュウギュウ型の原因は、血管を収縮させるアンジオテンシンという物質が血液中に増え、血管が狭くなることにあります。アンジオテンシンは、レニンという腎臓から分泌される物質によって刺激され、さらに増えます。この血圧調節の仕組みは、レニン・アンジオテンシン系と呼ばれています。ARBにはアンジオテンシンを抑える働きがあり、このタイプの高血圧に有効です。
一方、パンパン型は、塩分の取りすぎが原因です。塩分を過剰に取ると、血液中の塩分濃度が高まり、それを薄めて元に戻そうと、細胞から水分を血管に取り入れ、血液量が増えて血圧が高くなります。こちらには、ARBはあまり効果的ではありません。
日本人には、塩分の取りすぎによるパンパン型が多く、高齢者の約7割はこのタイプで、ARBが効きにくいのです。しかし、そうした患者にもARBが処方されているのが現状です。
年齢により推奨する薬が違う欧州の学会
それでは、どのような薬を選択すればよいでしょうか。
高血圧の薬には、ARBのほかに、利尿薬、カルシウム拮抗薬、ACE(エース)阻害薬などがあります。利尿薬は、血液中の水分や塩分を尿として排出することで血液の量を減らし、血圧を下げます。「パンパン型」に有効です。カルシウム拮抗薬は、血管壁にあるカルシウムイオンの流れを遮り、血管を広げる働きがあります。ACE阻害薬は、ARBと同様にアンジオテンシンの産生を抑えて血管を広げ、血圧を下げます。
桑島医師は、高齢者や、血液検査でレニン値の低い患者には、利尿薬やカルシウム拮抗薬が適していると言います。逆に比較的若いか、レニン値が高い場合は、ARBやACE阻害薬の効果が期待できます。カルシウム拮抗薬は、いずれの場合にも効果があるうえ、副作用が少なく、最も勧められるとしています。
ヨーロッパの学会の指針では、年齢によって推奨する薬の種類が違いますが、日本の高血圧学会の指針では、これらの薬を一律に勧めていて、年齢などによる選択基準がありません。こうしたことも、適切な薬が使われない背景になっているようです。(田中秀一 読売新聞東京本社調査研究本部主任研究員)
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まみい
ノバルティスの文献捏造問題は、確かに患者や医者を欺いた、とんでもない事件であることは間違いない。 日本で使用されているARBは、ディオバンだけで...
ノバルティスの文献捏造問題は、確かに患者や医者を欺いた、とんでもない事件であることは間違いない。
日本で使用されているARBは、ディオバンだけではないし、世界的に認められた大規模データ論文がいくつもあるARBも複数使用されている。
ARBは、少々値段は高いが、優秀な高血圧治療薬だよ。
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腎臓への負担は
hal-9000
「心臓病や脳卒中を減らす」ことだけが、効果ではないでしょう。 私は、腎臓への負担が気になります。 私は今、ARBを含む降圧剤を処方されています。...
「心臓病や脳卒中を減らす」ことだけが、効果ではないでしょう。
私は、腎臓への負担が気になります。
私は今、ARBを含む降圧剤を処方されています。
先生のおっしゃるには、腎臓への負担の小さい薬だそうです。心臓病云々は、特に聞いたことがありません。
ARB一般に腎臓への負担が小さいのかどうかわかりませんが、少なくともそういう薬もあるのですから、一概にARBはダメと決め付けることはないと思います。
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