心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
「山田一郎症候群」「鈴木和子病」……その人だけの症状を認めよう
病名の認知度で軽重を計ってはいけない
それでもなお、どこにも分類できないようなものもあります。
私は仕方なく、患者さん個人の名前を使用して「山田一郎症候群」だの、「鈴木和子病」だのと固有名詞で表現し、患者さんにもそう伝えています。
病名に名前を使われた患者から「ふざけるな」と叱られるだろうと思っていましたが、あにはからんや「やっと病名がついてよかった」と言われたことがあります。それまで、詐病だ、精神病だと疑われて、医師から診察拒否を食らっていたから、理解してもらえてほっとしたというのです。
ただ、有名ではない病名をつけている時の自分の中に、ひとつの払拭しがたい懸念があります。それは、有名な病名なら尊重するが、認知度が低かったり、病名がつかなかったりする場合は軽視するという姿勢が社会にあることです。認知度が低いと、研究の対象にも、救済の対象にもなりにくい傾向があります。
誰もが知っている有名な病名でも、メカニズムがわからないものは実はたくさんあります。認知度が低くても、有名な病気以上に、その患者にはつらく心配な症状がある場合も厳然としてあるのです。医師にも社会にも国にも、病名で病の軽重を計ってほしくないと思います。
(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
2 / 2
【関連記事】