医療大全
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【平成時代】闘う(7)新型インフル 対応混乱
「僕もまさかと思いましたよ」
神戸市灘区の辻本内科院長、辻本英明さん(61)はそう振り返る。
海外で新型インフルエンザが発生し、国内流入を食い止めようと検疫態勢が強化されていた2009年5月12日。37・4度の発熱で受診した高校生が、簡易検査でインフルエンザと分かった。渡航歴はなく、症状も普通の季節性インフルエンザと変わらなかった。
だが、例年なら流行時期は過ぎているのに、「学校では他にも生徒が休んでいる」という。市に詳しい検査を依頼した。15日に新型インフルエンザと判明し、国内での感染が確認された最初の事例となった。
当時、市予防衛生課長で、今は大阪府枚方市保健所長の白井千香さん(56)は対応に追われた。高校生の体調はほぼ回復していたが、国の計画に沿って、職員が自宅まで迎えに行き、入院させた。
診断を確定させるため、国立感染症研究所(東京都)に検体を送る手順も決まっていなかった。警察の協力を得て、職員がパトカーを乗り継いで東京に運んだ。
市内で多くの学校が休校になり、約100万人が訪れる祭りも中止された。市が設置した相談センターでは、100人以上の職員が殺到する電話に応じた。
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