文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

認知症介護あるある~岡崎家の場合~

医療・健康・介護のコラム

認知症介護の助っ人は個性派集団! でもやっぱり若いヘルパーさんがいいのね…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

話を聞いてもらうだけで救われた

 父さんのことはもちろん、当時、抗がん剤治療中の母さんを看病するしんどさを話したとき、一緒に涙を流してくれたことは忘れられません。何も言わなくても、話を聞き、ともに涙を流す……。それだけで、私の心はずいぶん軽くなったのを覚えています。

 さらに、「要介護4以上だと上下水道料金が割引になる(※地域により異なる)」など、本来ならば自分で調べなくては得ることができないような目からウロコの情報なども「介護って、お金がかかるからねぇ~」なんて言いながら、事細かに教えてくれました。介護の「か」の字も知らなかった私に認知症介護のイロハを教えてくれたのは、Kさんなのです。

 こういった介護者に寄り添ってくれるケアマネジャーも「認知症介護あるある」のようで、細かい気遣いに救われたという声を介護仲間からよく聞きます。

 そしてKさんは、母さんの体調が落ち着くまでの間、「訪問ヘルパー」を利用するよう勧めてくれ、我が家に日替わりで数人のヘルパーさんが来てくれることになったのです。このヘルパーさんたちも実に個性豊かで、頼れる認知症介護の助っ人でした。

マヒした手に包丁握り、得意の魚料理で父さんいきいき

 「たとえ失敗しても、以前得意だったことにチャレンジするのは本人の生きる自信につながる」などと、魚をさばくことが得意だった父さんと一緒に魚料理に挑戦してくれる方もいました。脳出血によるマヒがある手でおろした魚は、身が崩れてしまいましたが、久しぶりに包丁を握った父さんはとてもいきいきとしていました。

 こういった、認知症介護において日々の生活で大切にしなくてはいけないことも、彼女たちから学びました。

 その中に1人だけ20代で笑顔のかわいらしい女性のヘルパーさんがいました。これも「認知症介護あるある」ですが、異性の若いヘルパーさんには、介護を受ける方も「優しく、笑顔が多い」などという話を介護仲間からよく聞きます。父さんもそのヘルパーさんが来る日だけは、笑顔が20~30%増しだったように思います。

 逆に、どうしても父さんと相性が悪く、途中で代わってもらったヘルパーさんもいます。家族としては心が痛みましたが、そこはみんなが無理なく介護を続けていく (すべ) だと割り切りました。

現場のプロに支えられ、介護生活20年

 訪問ヘルパーによる介護サービスの利用については「家の中へ他人が入ってくることに抵抗がある」という声も少なくありません。ですが私はトンチンカンな父さんと2人だけで息が詰まりそうになる日々の中で、元気なオバちゃんヘルパーさん、笑顔のかわいい若いヘルパーさんが父さんや私に話しかけてくれ、みんなに笑顔が出る時間に救われていました。

 余談ではありますが、当時、我が家では体重22kgの愛犬クロが、なぜか室内犬として飼われていました。デキるケアマネジャーのKさんは、私が言い出す前に「犬好きのヘルパーを派遣しますね」と、ここでもなかなかできない気遣いをしてくれました。クロが亡くなったとき、Kさんが派遣してくださった犬好きの歴代ヘルパーさんが次々と献花に来てくれて、みなさんのこういった優しさにも、私たちは支えられていたのだと感じました。

 来月で、父さんの認知症介護生活も丸20年になります。そして改めて思うのです。認知症介護はやはり一人ではできません。こういった現場のプロたちの支えがあってこそ、なんとか20年間、在宅で父さんの認知症介護をやってこられたのです。(岡崎杏里 ライター)

 登場人物の紹介はこちら

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

column_aruaru-200re

認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

hino-117-fin

日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

認知症介護あるある~岡崎家の場合~の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事