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【平成時代】(上)認知症と地域…尊厳重視 その人らしい生活

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介護保険スタート 広がる支援

平成時代 認知症と地域(上)尊厳重視 その人らしい生活

大谷るみ子さん

 平成の約30年間、日本の社会保障はどう変化を遂げてきたのか。3回に分けて、時代を 牽引けんいん してきた民間リーダーに、振り返ってもらう。初回は、認知症と地域をテーマに、福岡県大牟田市で認知症の人の支援を続ける「大牟田市認知症ライフサポート研究会」代表の大谷るみ子さん(60)に聞いた。

 《大牟田市は、2004年から毎年、警察や住民らが参加し、行方不明の認知症の人を捜す訓練を続けている》

 訓練の成果もあり、多くの命が助かっている。それだけでなく、住民が日頃から認知症の人を見守り、声をかけるなど、助け合いの気持ちも強くなった。

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大牟田市内の中学校で認知症に関する啓発活動を行う大谷さん(2005年10月撮影)=上

 当初は、「安心して 徘徊はいかい できるまち」を掲げ、「徘徊模擬訓練」と呼んでいた。だが、15年に「徘徊」という言葉を使うのをやめた。前年に訓練を視察した認知症の男性から、「徘徊は、あてもなくうろうろすること。あてはあったんだけど、途中で忘れただけだ」と言われたのがきっかけだ。当事者からすれば、「徘徊」は、偏見なんだと気が付いた。当事者が関わることで地域に共感が広がった。

 《2000年に介護保険制度がスタート。認知症の人への支援が広がった》

 1990年に市内の整形外科病院の看護部長に就任し、94年には特別養護老人ホームでも働くようになった。

 当時、お年寄りが認知症になっても、家族は「恥」と考え、だれにも相談できなかった。家族による介護が行き詰まってから施設に預けるので、本人も家族も疲弊していた。しかし、当時の多くの施設では、認知症の人は「問題老人」扱い。職員もどう対応していいのかわからず、管理して問題行動を抑えつけたことさえあった。

 そんな時、デンマークで研修する機会を得た。病気や障害があっても普通に暮らす権利があること。一人ひとりの尊厳を重視し、その人らしい生活をしてもらう、という考えがケアの根本にあった。

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 2001年に認知症の人が少人数で暮らすグループホームのホーム長に就任し、デンマークで学んだことの実践を始めた。病院では妄想がひどく、対応に困っていたある女性は、生活の場であるグループホームに移り、なじみの職員と関わることで落ち着き、テレビでサッカーのワールドカップを楽しむまでになった。

 《04年、京都市で開かれた国際アルツハイマー病協会国際会議で認知症の本人が実名で講演し、衝撃を与えた》

 認知症の人自身にここまで力があるということを私たちは見ていなかった。認知症の本人が語る場はその後、各地にどんどん増え、大牟田市でも10年に認知症の人が集まる会を作った。14年には全国組織も設立され、当事者による政策提言も行われている。

 認知症は、やがては自分も通る道かもしれない。認知症がハンデにならない社会にするには、本人の生きる権利を土台に医療や介護が構築されないといけない。

 でも、今は自分が認知症になっても安心して暮らせるかどうかは分からない。介護現場には力のある所とそうでない所の差がまだある。制度の問題、人員不足の問題など、介護はいろいろなものに左右される。今の現場は余裕がなく、疲れ切っている。

 尊厳のあるいい介護を受けたいというのであれば、それなりの負担が国民に求められる。政治が信頼できるかどうかにもかかっている。

  ◇おおたに・るみこ  看護師。2001年から大牟田市の社会福祉法人東翔会のグループホーム「ふぁみりえ」ホーム長。

サポーター1000万人

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 平成の間、認知症への理解は一定程度進んだ。

 2004年、それまで使われてきた「 痴呆ちほう 」という言葉が「侮蔑的だ」などとして「認知症」に改められた。05年度からは、地域住民らが認知症に関する知識を学び、様々な形で支える「認知症サポーター」の養成が始まり、サポーターの数は1000万人を超えた。

 ただ、根本的な治療法や予防法は見つかっていない。25年には約730万人が認知症になると推計されている。介護家族による認知症高齢者への虐待や殺人、若年認知症の人の就労問題など、残された課題は多い。

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