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不妊と向き合う

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不妊と向き合う(2)仕事と治療、企業が支援…相談窓口や休暇・休職制度

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 働きながら不妊治療を行う人が増える中、そうした従業員向けの支援策を用意する企業が目立ってきた。ダイバーシティー(多様性)を重視する立場から、仕事との両立をサポートする。

サービス導入に向け打ち合わせをする小田急電鉄の細川さん(左)とファミワンの石川さん(右)ら(東京都新宿区で)

 小田急電鉄(東京)は9月中旬から、不妊治療の悩みに専門家が個別に応じる外部の相談窓口を設ける。社員とそのパートナーが無料で利用できる。人事部の細川詩織さんは「宿泊を伴う鉄道の現業部門で働く社員でも、勤務形態を踏まえた助言をもらえるような態勢を整えた」と話す。

 相談は無料通信アプリ「LINE(ライン)」を介して行われ、アンケートに答えると、不妊症看護が専門の看護師などが悩みを聞いたり、治療面で助言したりする。

 このサービスを提供するのは、妊活支援事業を手がけるファミワン(東京)。社長の石川勇介さんも不妊治療経験者で、「患者は孤独になりがち。専門家や企業と共に、夫婦をサポートしたい」と話す。

 不妊治療に専念できるよう休職制度を設ける企業も登場している。2016年に導入した日本航空(東京)は最長1年の休職が可能で、客室乗務員を中心に約30人が利用中だ。フライトがあると急な通院が難しいが、制度により腰を据えて治療できる。

 同じ立場で業務をこなせる人が複数おり、休職中の人員配置に支障はない。妊娠に至らず復職しても気兼ねなく話せる雰囲気があり、戻った社員は働き続けている。

 富士ゼロックス(東京)は12年に両立支援関連の制度を見直した際、最長1年の休職制度を新設した。不妊治療の費用を共済会が年1回5万円補助する制度もあり、男性社員からの申請が多いという。

 行政も後押しする。東京都は18年度、治療向けの休暇・休業制度など四つの条件を満たせば、都内の企業1社につき最大40万円の奨励金を支給する事業を始めた。前期の募集には予定の2倍以上の応募があった。厚生労働省は「不妊治療連絡カード」を作成し、ホームページで公開。一般的な治療の流れも記載され、患者が職場で細かく説明せずに済みそうだ。

 もっとも、厚労省の17年度の調査では、企業の70%は治療中の従業員への支援制度がなかった。「要望が表面化していない」「治療中の従業員を把握していない」などが主な理由だ。

 治療中の40代の女性会社員は「治療したのに妊娠できないと思われるのが嫌だし、頻繁な通院の理由を説明しても理解してもらえるか不安だ」と打ち明ける。従業員側から声を上げるのは難しい。

 参考になるのがサイバーエージェント(東京)の取り組みだ。同社は月1日(半休も可)の妊活休暇を取得できるが、通常の有給休暇も含め女性社員が取得する休暇は全てfemale(女性)にちなんだ「エフ休」と呼ぶ。周囲には妊活休暇とわからない。

 少子化ジャーナリストの白河桃子さんは「働き方改革に伴う有休の取得促進や、フレックス、テレワーク、時間単位で取得できる有休など選択できる働き方の普及が、不妊治療に大きく貢献する。仕事に集中する時期や、治療と両立する時期を選べるよう、柔軟なキャリア形成が可能になるとよい」と話している。

◎意見募集  不妊治療について、仕事との両立などに関する体験談や記事への意見をお寄せください。住所、氏名(紙面では匿名可)、職業、年齢、連絡先を書き、〒100・8055読売新聞東京本社生活部「不妊と向き合う取材班」へ。ファクス(03・3217・9919)、電子メール(kurashi@yomiuri.com)でも受け付けます。

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