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望ましい最期(3)延命、問われる覚悟

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「本人の意思聞いていれば・・・」

 「もしも心臓や呼吸が止まったとき、心肺蘇生を望まれますか」

 洋画家・タレントの城戸真亜子さん(57)は昨年春、義母が肺炎で入院した時、主治医から延命治療の方針について聞かれた。

 その頃、長年同居していた義母は認知症が進行し、東京都内の特別養護老人ホームで暮らしながら、かかりつけの病院へ入退院を繰り返していた。

 心臓マッサージは胸を強い力で圧迫される。城戸さんは、弱ったあばら骨が折れ、義母が苦しむのはかわいそうだと考えた。「心肺蘇生を行わないということは、見殺しにするということですか」。隣の夫はそう言ったきり、押し黙った。

 義母は、ほぼ寝たきりの状態だったが、ホームを訪ねた城戸さんがスプーンで食事を口元へ運ぶと、おいしそうに味わった。その姿を見ると、「別れは遠くないだろうな」と思いながらも実感がわかず、夫婦で話し合う機会を持てなかった。

 その時は、突然訪れた。

 昨年10月、城戸さんの携帯電話が鳴った。「お母さんの呼吸が弱くなっています。救命救急センターに運びますか」。ホームの119番で駆け付けた救急隊員からだった。切迫した声に動揺し、とっさに「お願いします」と答えた。

 センターでは、救急医から「ここに運んだということは、心肺蘇生を望まれるのですね」と念を押された。半年前から何度かあった主治医の問いかけへの答えは、夫婦で出せていなかった。城戸さんは「家族は、生かすかどうかの選択を迫られるのだと、その時に初めて実感した」と言う。

 この時は容体が安定して退院。かかりつけの病院に移り、1週間後に95歳で息を引き取った。

 「元気な頃に本人の意思を聞いていれば、最初からセンターに運ばず、静かな時間が過ごせたかもしれない。でも、義母が目の前で生きているのに、家族は覚悟を決められない」。城戸さんは振り返る。

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 福岡市・天神にある済生会福岡総合病院。脳卒中や心肺停止などの重症者を24時間体制で受け入れる救命救急センターには、終末期の高齢者も運ばれてくる。2017年度の救急搬送は4098件。65歳以上の高齢者が6割を占めた。

 「もちろん治療は開始する」と、則尾弘文センター長。同時に「回復が難しい場合は、心臓マッサージや気管挿管を希望するか、家族に意向を確認するようにしている」と話す。

 以前は、搬送患者のすべてで救命が優先されてきたが、高齢化に伴い、救急の現場も本人や家族の希望を尊重するよう変わりつつある。自宅や施設で 看取みと る場合、救急搬送すべきでないとの指摘もあるが、則尾センター長は「24時間対応できる在宅医はまだ少なく、看取りにも対応しているのが現状」と説明する。

 福岡県久留米市の聖マリア病院は11年、救急搬送された終末期患者の治療に関する「提言」を独自に作った。一定程度治療を続けても、意識の回復や自発呼吸が望めない場合、本人や家族の意思を確認したうえで、延命措置を中止するといった内容だ。

 ただ、作成に携わった福田賢治・脳神経センター長は「患者の意思の尊重は、今後ますます重要になる。どの状態で治療を中止するかは、医師の間でも統一されておらず、『提言』の現場での活用や議論はこれからだ」と打ち明ける。

 家族と医師。それぞれが迷い、模索している。

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