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第24回口腔保健シンポジウム

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[第24回口腔保健シンポジウム](2)歯周炎 全身に悪影響

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特別講演…山崎和久さん

[第24回口腔保健シンポジウム](2)歯周炎 全身に悪影響

 私たちの口の中、皮膚、腸の中などには体を構成する細胞の数を上回る数の細菌が生息しています。その種類も数百から1000種類に及ぶとされ、多様な細菌集団を細菌 そう といいます。一番多く生息しているのは腸、次に多いのが口の中で、それぞれ腸内細菌叢、 口腔こうくう 細菌叢と呼びます。口腔細菌は口の健康に大切で、バランスが崩れると虫歯や歯周病になります。

 一方、腸内細菌は、病原菌の侵入を阻止する大事な働きをしています。また、食べた物のうち、消化酵素で分解できない物を分解してエネルギーにしています。さらに、免疫機能の発達や様々なホルモンの産生にも関わっています。

 腸内細菌叢のバランスの崩壊は色々な病気と関連することが知られています。最近、口の中の病気である歯周病が腸に影響を及ぼして全身にも悪影響を与えることもわかってきました。

 歯磨きを怠ると、歯の表面や歯と歯肉の境目に細菌がたまってプラーク( 歯垢しこう )ができ、歯肉炎になります。歯肉炎を放置すると、歯と歯肉の間に歯周ポケットという溝ができます。溝の中に細菌が増え、歯石もできます。歯を支えている骨や歯周組織全体が壊れて歯周炎になります。ごく軽度以外は治療をしても元通りにするのは難しくなります。

 歯周病は口の中だけにとどまらず、糖尿病を悪化させることがわかっています。それ以外にも脳卒中や心疾患、炎症性腸疾患、関節リウマチ、がん、早産・低体重児出産と様々な病気のリスクを上げることもわかってきています。

 歯周炎になると歯周ポケットの内側は潰瘍状態で出血しやすく、細菌が体の中に侵入しやすくなります。侵入した細菌や細菌が作った病原物質、炎症を起こす物質が、血流に乗って様々な組織に届きます。全身の炎症の状態を悪化させたり、糖や脂質の代謝に悪い影響を与えたりすることが考えられます。ただし、この仮説だけでは説明できない現象も報告されています。

 歯周病が関連している病気と、腸内細菌のバランスが崩れてリスクが高くなる病気の多くが共通しています。

 歯周炎の患者の口の中では、細菌叢のバランスが崩れています。歯周病の患者は、1種類の歯周病菌だけでも1日に唾液とともに約100億個をのみ込んでいる計算になります。食後の胃酸の酸性度は高くなく、のみ込んだ菌のかなりの量は生きたまま腸まで届いていることがわかりました。

 脂肪の多い食事をとって肥満になったり、糖尿病になったりした場合と同様に、腸まで届いた歯周病菌によって腸内細菌の構成が崩れ、悪玉菌が増え、それらが作る毒素や悪い代謝物が増えます。腸のバリア機能も低下し、内臓に障害を与え、代謝性の疾患や自己免疫疾患などのリスクを上げるのではないかといわれています。口腔内と腸内の環境整備は全身の健康に重要だと改めて強調したいと思います。

  ◇やまざき・かずひさ  1980年、神奈川歯科大学卒業。85年新潟大学大学院歯学研究科修了。豪・クイーンズランド大学研究員、新潟大学歯学部助教授などを経て、2010年から新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔保健学分野教授。

 【参考になるウェブサイト】

◇日本歯科医師会 テーマパーク8020
https://www.jda.or.jp/park/

◇サンスター Mouth&Body PLAZA
http://www.mouth-body.com/

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