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第24回口腔保健シンポジウム

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[第24回口腔保健シンポジウム](1)糖尿病 「要介護」の誘因

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 「〈人生100年時代〉健康寿命の延伸はお口のケアから~歯周病が与える糖尿病と腸への影響、最新情報~」をテーマにした「第24回口腔保健シンポジウム」が8月4日、東京・大手町のよみうり大手町ホールで開かれ、約400人が参加した。1994年に東京で開催された「世界口腔保健学術大会」を記念し、お口の健康に関する理解を市民に広める恒例の企画。歯周病が全身の病気に与える影響について専門家が解説した。タレントの益子直美さんを交えてパネルディスカッションなども行われた。

主催 日本歯科医師会
後援 厚生労働省、8020推進財団、日本歯科医学会、読売新聞社ほか
協賛 サンスター株式会社

基調講演…松久宗英さん

[第24回口腔保健シンポジウム](1)糖尿病 「要介護」の誘因

 糖尿病は100年ほど前に治療薬インスリンが発見され、すぐに命を落とす病気ではなくなりましたが、多様な合併症が大きな問題になっています。

 2017年現在で全世界の患者数は4億2500万人で、かかる医療費も83兆円と膨大です。今後も患者数は増えていく傾向にあります。

 日本で強く糖尿病を疑われる人の数は推計1000万人に達しました。ところが、糖尿病だけど症状がないからと未治療のままの人が多い。きっと皆さんの周囲にもいると思います。

 しかし、この病気を放置すると、あちこちの血管が障害を起こします。失明したり、腎不全で人工透析になったり、足の血管が詰まって足を切断したり、心筋 梗塞こうそく や脳梗塞も招いたりします。

 また大腸、肝臓、 膵臓すいぞう などのがんリスクを高めます。がん組織はブドウ糖が大好物です。高血糖やインスリンの作用不足が、がんにかかりやすくします。

 健康寿命という点で重要になるのは、要介護状態をいかに防ぐかです。脳血管障害、認知症、転倒・骨折など様々なことが要介護の原因となりますが、これらにも糖尿病は大きく関わっています。

 突然、要介護状態になるのでなく、その前に徐々に体が弱っていく過程があります。これを「フレイル」と呼びます。虚弱、 脆弱ぜいじゃく という意味です。

 フレイルは健康に戻れる最後の とりで です。この段階で自分の状態に気付くことで、その前の状態、さらには健康な状態に戻ろうという意味があります。

 重要なのが太ももの筋肉です。地面を蹴り上げる力が衰えると転倒しやすくなります。糖尿病の高齢者では、足の筋力が弱っている割合が高くなります。

 テレビを見ながら足踏みをしてくださいと最近はよく言っています。軽いスクワットもお勧めです。

 糖尿病によって認知症になるリスクが2倍前後に、糖尿病予備軍でも同1.5倍ほどに高まることもわかってきました。

 それではどう糖尿病を治療するのか。

 医師だけでは十分なことはできません。管理栄養士、看護師、理学療法士、薬剤師など色々な職種が、歯車がかみ合うように力を合わせて、患者を良い方向に動かさないといけないんです。

 肥満の解消、適度な食事、低血糖の回避などが治療の基本になります。中でも重要なのが運動です。

 運動は2種類あり、それぞれ役割があります。一つは有酸素運動です。おしゃべりしながらできる強度の運動で歩行やジョギング、水泳などです。肥満解消や血糖値改善の効果が高いです。

 スクワットや腹筋など筋力を増やそうというのがもう一つのレジスタンス運動です。筋肉の材料となる鶏、豚、牛、卵、牛乳などのたんぱく質を十分に取って、筋トレをすると、75歳以上でも筋力アップができるのです。

 徳島県ではICT(情報通信技術)を使って患者の診療情報や薬の服用歴などのデータを、病院の医師やかかりつけの開業医ら医療関係者が共有する「阿波あいネット」という取り組みを行っています。

 今後は、医療情報だけでなく、患者のスマートフォンを使って歩数や体重、血圧などの記録も組み合わせ、より効果的な栄養指導や生活指導を確立したいと思います。

  ◇まつひさ・むねひで  1987年、岡山大学医学部卒業。カナダ・トロント大学客員研究員、大阪大学講師などを経て、2017年から徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター長・教授。糖尿病の治療法開発やICTを使った地域医療連携に取り組む。

 【参考になるウェブサイト】

◇日本歯科医師会 テーマパーク8020
https://www.jda.or.jp/park/

◇サンスター Mouth&Body PLAZA
http://www.mouth-body.com/

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