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障害者雇用「真剣でない」…中央省庁の水増し問題、関係者ら疑問の声

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障害者雇用「真剣でない」…中央省庁の水増し問題、関係者ら疑問の声

車いすに座ってパソコン作業をする家平さん(28日、東京都新宿区で)

 中央省庁の障害者雇用率の水増し問題は、障害者手帳を確認しなかったり、健康診断の結果をそのまま使ったりするなど、ずさんな算入方法が厚生労働省の調査で次々と明らかになった。企業などで働く障害者や支援団体からは、国の対応に批判や疑問の声が相次ぐ。

 「一体どうしたらこんなことが起きるのか」。都内のIT企業に障害者雇用枠で勤める桜井啓介さん(46)は首をかしげる。

 桜井さんは、免疫を作る機能が低下する病気で身体障害者手帳を取得している。定期的な治療が必要だが、障害があることは見た目ではわからない。これまで3社で働いた経験があるが、採用時や産業医との面談などで障害者手帳を会社に提示する機会は何度もあった。

 複数の省庁では手帳を確認せず自己申告などで算入をしていたが、桜井さんは、「障害者の雇用には、個々の状態に応じた職場のサポートが必要。障害の種別や等級が書かれた手帳すら確認していないようでは、障害者雇用に関心がないとしか思えない」と話す。

 東京都内の障害者を支援するNPO法人「日本障害者センター」で働く家平悟さん(47)も、「国は、働く障害者への配慮を企業に求めながら、障害者雇用を真剣に考えてこなかったのではないか」と指摘する。

 中学生のころ、プールへの飛び込みで 頸椎けいつい を損傷。2007年からNPO法人に勤めるが、身の回りのことに介助が必要で職場にも介助者が配置されている。

 家平さんは、「事故で何もできない存在になったと思っていたが、働いて賃金を稼ぐことで社会の中で役割を果たせていると感じられるようになった」と語る。

 障害者団体でつくるNPO法人「DPI日本会議」(東京)の西村正樹・副議長は「約3500人分も不適切な計上をし、多くの障害者の雇用機会を奪っていたことにもなる。非常に大きな問題で制度の信頼を損なった。国は徹底的に検証を進める必要がある」と訴えた。

民間企業「障害者は戦力」

 障害者雇用を進めてきた民間企業の担当者からは、「障害者は戦力だ」との声が上がる。

 障害者雇用促進法は原則、従業員の2・2%にあたる障害者を雇うことを民間企業に義務付ける。従業員が100人超の企業は、雇用率を達成できないと、足りない人数1人あたり原則月5万円の納付金が課される。

 保険調剤薬局大手「クオール」(東京)では、障害者雇用を進めるために子会社を設置。重度身体障害者ら44人が、在宅でデータ入力や名刺・ポスターの制作、印刷業務を担う。子会社の青木英社長は、「労働意欲が強く、作業に時間がかかっても高品質なものができる。労働人口が減少し、高齢化が進む中、障害者も労働力と捉えるべきだ。国には民間企業の知恵や工夫を学んでほしい」と話す。

 都内でサービス業を営む企業では、子会社が書類印刷や封入、備品管理などの作業を本社から請け負い、知的障害がある社員らを雇用する。

 担当者が本社の各部署に趣旨を説明して業務を増やし、雇用する障害者は10年前の子会社設立時から約20倍に増えた。担当者は「民間企業は苦労しながら取り組んでいるのに、こんなに多くの国の機関で水増しがあったなんて」とあきれる。

 企業向けに障害者雇用のコンサルティングを行う「ゼネラルパートナーズ」(東京)の進藤均社長(45)は「障害者が働きやすい環境を整えることは、病気や子育て、介護などの事情を抱える社員にとっても働きやすい職場作りにつながる。少子高齢化が進む日本にとってメリットは大きい」と指摘している。

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