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さくらももこさんの命を奪った乳がん…再発時の治療薬の選び方

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さくらももこさんの命を奪った乳がん…再発時の治療薬の選び方
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 さくらももこさんの命を奪った乳がんだが、再発乳がんへの薬物治療の幅は徐々に広がっている。40歳の時に手術した乳がんが3年前に再発し、肺などに転移した名古屋市の佐藤博美さん(55)は、昨年末、新しく登場した飲み薬イブランス(商品名)に切り替えた。「がんは小さくなった。口内炎やだるさはあるが、我慢できない副作用ではない」と話す。

(石塚人生)

 国内では、年間約9万人が乳がんを発症するとみられる。女性がかかるがんではもっとも多く、手術や放射線治療の後、再発して長期間、治療を続ける人も少なくない。

 再発乳がんの場合、薬物治療が基本となるが、女性ホルモン(エストロゲン)に反応する性質の有無などによって様々なタイプがあり、使う薬も異なる。

学会推奨の3種類

 今春改訂された日本乳 がん 学会の「乳癌診療ガイドライン(指針)」は、女性ホルモンに反応するタイプの乳がんが閉経後に再発したという人に対し、3種類の治療を強く推奨する。再発した患者の多くは、この条件に当てはまるという。

 一つ目は、女性ホルモンを作り出す働きを抑えて、がんが大きくなるのを防ぐアロマターゼ阻害薬(アリミデックス、アロマシン、フェマーラ)だ。

 ほてりや関節痛、汗が多くなるといった副作用があるが、長期間服用できる。1年間の薬剤費は20万円前後で、自己負担はその1~3割だ。

 二つ目は、がん組織が大きくなる際に必要な酵素の働きを妨げるイブランスだ。アロマターゼ阻害薬などと併用する。国際的な臨床試験(治験)では、併用によって、がんが悪化せずに生活できる期間が10か月程度延びた。

 一方、白血球減少や疲労感、吐き気など副作用はやや多い。薬剤費は年間約600万円と高額になる。国の高額療養費制度を使えば、自己負担は大幅に抑えられるものの、小さくない。

 三つ目は注射で投与するフェソロデックス。女性ホルモンと結びつくがん細胞のホルモン受容体の働きを妨害する。

 昨年、適応が拡大され、再発直後の治療でも使えるようになった。毎月通院する必要があるが、飲み薬が苦手な人や服薬を忘れがちな人も確実に投薬を受けられる。

開発の新薬も期待

 今回の3種類の治療は、どれを選択しても、最終的な延命効果に大きな差はないものの、病状の変化に合わせて受ける治療を変えていくことで、さらに新しい薬の登場を待つことも期待できる。

 「BRCA」という遺伝子に変異があるタイプの乳がんが再発した場合は、リムパーザという新薬が今年から使えるようになった。薬物療法の急速な進歩によって、乳がんと闘う手段は確実に増えている。

 指針作りに携わった名古屋市立大学乳腺外科学教授の遠山竜也さん(54)は「患者さんは、それぞれ治療の目標や望む生き方が違う。納得できるまで医師から薬の特徴を説明してもらい、自分に合う治療法を決めてほしい」と話す。

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