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「障害者への背信行為」…省庁の雇用、水増し横行に批判

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「障害者への背信行為」…省庁の雇用、水増し横行に批判

 障害者の自立支援の先頭に立たなければならない立場の国の省庁で、雇用数の不適切な算入が横行していたことが明らかになった。28日、厚生労働省が公表した再調査結果では約3500人分に上り、実雇用率も1・19%と法定雇用率(当時は2・3%)を大きく割り込む事態に。各行政機関のトップらは相次いで謝罪したが、障害者団体からは「障害者への背信行為だ」と怒りの声が上がった。

資料確認、有名無実化

 「あってはならないことと重く受け止めており、深くおわびを申し上げる」。中央省庁の障害者雇用の不適切算入の実態が明らかになったことを受け、菅官房長官は28日午前の記者会見で頭を下げて陳謝した。

 雇用者数への算入にあたっては、障害者手帳や医師による判定書など、客観的な資料で確認することが国の指針で定められている。だが、今回の調査で明らかになったのは、こうした指針が有名無実化していた実態だ。

 不適切な算入が1000人を超え、全省庁で最多となった国税庁では、障害者手帳などを確認せず、本人からの申し出を含む人事関係の調書を基に判断し、算入していたという。担当者は「誤って算入していたことを重く受け止めている。法定雇用率を達成するため、今後きちんと対応したい」と語った。

 500人以上が不適切に算入されていた法務省でも、障害者手帳で確認せずに、雇用に算入するなどしていた。上川法相は28日の会見で「(制度を)適正に運用できていなかったことは事実。誠に遺憾だ」と謝罪。一方で、「厚生労働省の指針についての認識が十分でなかった」と述べ、意図的な水増しではなかったと強調した。

 実雇用率が0・54%にとどまることが判明した環境省。中川環境相はこの日の閣議後会見で「意図的とは考えていない。障害者手帳の有無を確認する必要性を認識していなかった。いつからとは検証できないぐらい、長い間のやり方を踏襲してきた」と語った。

 制度を所管する厚生労働省でも指針は守られていなかった。厚労省によると、精神障害者保健福祉手帳の有効期限が切れていたり、身体障害者の診断書が国の通知で定められた様式でなかったりしたケースがあり、対象者は短時間勤務者を含め、3・5人分減った。

 加藤厚労相は閣議後の記者会見で、「事務処理の不徹底があったことを 真摯しんし に反省し、今後正確な報告を行うよう徹底したい」と述べた。

「雇用率、公表数値の半分以下とは」障害者団体、厳しく批判

 各省庁での水増しともとられかねない実態が明らかになったことを受け、障害者団体からは憤りの声が相次いだ。

 日本障害者協議会(東京)の藤井克徳代表は、「雇用率が公表数値の半分以下だったとは、ごまかしどころではなく、国の機関としてあるまじき背信行為だ」と厳しく批判。「単年度でも、約3500人の障害者が国の機関で働く機会を奪われていた。徹底して事実関係を明らかにし、障害者の前できちんと説明をしてほしい」と求めた。

 精神障害者の当事者団体「精神障害者権利主張センター・絆」(同)の事務局担当の山本真理さん(65)も、「障害者との共生社会の実現に向けて雇用を増やすという制度は看板だけだったのか」と怒りをあらわにし、「『算入方法を誤った』という理由で許される規模ではない。障害者を排除しようとする意思を感じる」と指摘した。

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