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僕、認知症です~丹野智文44歳のノート

医療・健康・介護のコラム

初対面なのに「まるで同窓会」…世界の認知症当事者と出会ったシカゴの旅

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国際会議で日本の現状伝える

 国際アルツハイマー病協会の国際会議が、先月26日から4日間にわたってアメリカのシカゴで開かれました。私も出席するため、24日に日本をたちました。

 私は月に1度、オーストラリアやアメリカ、カナダの当事者たちとWeb会議ソフト「Zoom」を使って、意見交換をしています。英語は全くダメなのですが、皆の友人でオーストラリアに住む日本人女性が通訳をしてくれるおかげで不自由はありません。当事者同士、共感することも多いので、いつも会話が弾みます。

 その仲間たちがそれぞれの国からこの国際会議に参加すると聞いて、私も行くことにしたのです。日本で認知症とともに生きる私から皆さんに伝えたいことをまとめた講演要旨をつくり、英語に翻訳してもらってエントリーしました。

Web会議のメンバーとついに…言葉の壁を越えて交流

 実は、「Zoom」のメンバーの多くとは、これまで直接会ったことはありませんでした。でも、いつもパソコン画面で顔を合わせているおかげで初対面という気が全くしないのです。以前からの友人に再会したような感覚でした。他の人も同じように感じていたようで、「まるで同窓会みたい」と口々に言っていました。

 会場には当事者のための休憩室があり、交流の場になっていました。私は、そばにいる人に通訳してもらったり身ぶり手ぶりで会話したりしていましたが、すぐに打ち解け合うことができて、言葉の壁はほとんど感じませんでした。

「私たちは認知症の専門家」社会を変える意識

 会議では、「ディメンシア・エキスパート」という言葉を繰り返し耳にしました。認知症とともに生きる私たち当事者こそが、「認知症の専門家」だというのです。

 ある研究者の発表の後、会場にいた当事者が手を挙げ、「その研究チームには、認知症の人はいるのですか?」と尋ねました。そして、「いない」と聞くと、「当事者の意見も聞かずに行う研究に資金をつぎ込む意味はあるのですか」と厳しく批判し、「よりよい研究のために、ぜひ私たちを利用して下さい」と訴えていました。

 特に欧米やオーストラリアの当事者の間では、「自分たちが社会を変える」という意識が強いのです。学者の研究を真っ向から批判するなんて、なかなか私にはまねができませんが、当事者が誇りを持ち、主体的に社会と関わっていこうとする姿勢が印象的でした。

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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