脳梗塞
シリーズ
どう対応?認知症(3)怒る夫 周囲巻き込み対話
「薬なんて飲まない。死んだ方がましだ!」
昨年4月、軽い脳
「性格が変わっちゃったみたい」と妻(77)も戸惑った。家で亭主関白な態度になることはあったが、従来は社交的で、よその人をどなることはなかった。
高血圧、不整脈などの持病があり、かかりつけにしていた診療所では「認知機能の低下や気力の減退が進み、認知症の疑いがある」と診断されていた。
入院中に主治医になった同センター総合診療科副部長、金井貴夫さんは「前からあった認知機能の低下に、脳梗塞に伴う脳血管性認知症の要素が加わって、感情の抑制が利きにくくなった可能性がある」とみる。
手足のまひなどの後遺症はなく退院できたが、脳梗塞の再発予防のためには、血液をサラサラにする薬や高血圧の薬などを本人がきちんと飲む必要がある。
退院後は、妻が根気強く薬を勧め続けたが、怒って拒否する夫と口論になることが増えた。「私の言葉だけでは聞いてくれないし、こちらも感情的な言い方になってしまう」と思った妻。状況を打開するために、主治医の金井さんにも話に加わってもらうことにした。
診察の時に2人がかりで「薬を飲まないと命に関わる。心配だから」と丁寧に訴えた。そして、嫌々でも薬を飲んだら、「いいわね」と明るく褒めるよう心がけた。最初の1か月ぐらいは反発もあったが、昨夏ごろには、薬と水を渡せば、黙って飲むようになった。
ただ、退院後、外で転んでから引きこもりがちになり、昨年中は家で座ってばかり。「このままだと寝たきりになる」と危機感を持った妻は「デイサービスの利用」を真剣に考え始めた。
だが、妻が切り出すと、夫は「老人ホームは嫌だ」と勘違いして拒否した。
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