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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

コラム

風疹の流行、予防接種の変わらぬ「穴」…先天性の奇形を起こさせないためには

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 千葉県など関東地方を中心に、風疹が流行しています。患者の多くは30~50代の男性で、予防接種をきちんと受けていない年代です。厚生労働省は都道府県に対して、予防接種の徹底などを呼びかける通知を5年ぶりに出しました( 赤ちゃんに難聴も、関東で風疹急増…全国拡大も )。

「三日ばしか」…妊婦の感染、新生児に先天異常

風疹の流行、予防接種の変わらぬ「穴」…先天性の奇形を起こさせないためには

 風疹は別名「三日ばしか」と呼ばれます。英語では「Rubella」ですが、「ドイツの 麻疹(はしか) (German measles)」とも呼ばれます。要するに、今年春に沖縄県などで流行した麻疹とよく似た病気です( はしか対策…日本で流行が止まらない理由)。

 全身の発熱と発疹が特徴ですが、「三日ばしか」という名前が示唆するように、症状はやや軽め。熱は低め、皮疹も色がやや薄く、体のあちこちのリンパ節が軽く腫れ、体の節々がちょっと痛みます。

 「なーんだ、大した病気じゃないんですね」と思ったら大間違い。この感染症の最大の問題は、妊婦の感染にあります。妊婦が感染すると新生児の先天異常の原因となり、白内障や緑内障といった目の病気、脳髄膜炎、難聴、心臓の病気などの原因になります。

 特に妊娠初期は要注意です。妊娠11週までに感染すると、先天奇形のリスクは90%と非常に高い。先天奇形を起こす最大の感染症が風疹なのです。これは先天性風疹症候群(CRS)と呼ばれています。

男女への定期接種化以前の世代…「キャッチアップ」制度が必要

 1995年までは、日本では女児だけに風疹ワクチンを接種していました。しかし、男子も接種しなければ風疹の流行は防げません。流行が起きると、結局は妊婦への感染とCRSのリスクが生じます。

 その後は、男女ともに風疹ワクチンは定期接種化されましたが、それよりも上の世代は予防接種を受けていない人が多いんですね。2015年度のデータによると、30代女性の2割以上の方が、風疹ワクチン接種を受けていません。また、40~50代男性の半数前後が、やはり接種していません。

 こうした方々が感染して、CRSのリスクを生んでいるのです。ちなみに、風疹ワクチン(あるいは風疹と麻疹の混合ワクチン=MRワクチン)は生ワクチンといって、妊婦は打つことができません。妊娠してからでは遅いのです。(薬は)食べる前に飲む、(ワクチンは)妊娠する前に打つのが肝心です(若干、意味不明ですみません)。

 「また同じ話か!」と怒られるかもしれませんが、日本には、定期予防接種のスケジュール対象外の年齢であっても、必要な人に無料でワクチンを提供する「キャッチアップ」の制度がありません。そのため、定期接種の対象年齢に入らない人たちについては、例えば成人の風疹ワクチン接種はすべて自費になっています。

 今回の流行を受けて、厚生労働省は予防接種の徹底などを呼びかける通知を出しましたが、なぜキャッチアップを採用して無料で接種できるようにしないのか。僕だって、同じ話をクドクド繰り返したくありません。悪いとわかっているのに直さない。そこが、日本の医療行政の悪いところです。

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岩田健太郎(いわた けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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