安心の設計
妊娠・育児・性の悩み
脱・ワンオペ育児(下)父の子育て 第一歩は食事から
子どもの信頼 徐々に得る
脱・ワンオペ育児に向けて、夫がまず、どういった育児から関われば、夫婦ともに気持ちよく子育てに励むことができるのだろうか。
「休みの日以外は、長男の世話はほとんど妻任せになってしまっています」
7月下旬の休日、1歳の長男に食事を与えながら、東京都品川区の会社員、舟久保昇平さん(29)が話す。
平日は朝、長男を保育園に送っていくが、食事や着替えなどは妻任せ。帰宅はいつも午後9時頃になり、長男はすでに眠っているため、寝顔を見るだけだ。休日も、食事を作るなど家事の協力をすることはあるものの、育児に関しては圧倒的に妻の負担が大きいと感じている。
そんな妻は現在第2子を妊娠中。「子どもが2人になったら、妻に任せきりというわけにはいかないと思っています。ただ、何から協力すればいいのか」と舟久保さんは悩んでいる。
父親の育児支援を行うNPO法人ファザーリング・ジャパン(東京)の村上誠理事がまず勧めるのは、子どもの食事の世話だ。
「子どもは食事を食べさせてもらうことで、その人への安心感を深めます」と村上理事。離乳食が始まってからはもちろん、授乳期もミルクを飲ませることで、子どもが次第に父親を信頼するようになるそうだ。そうすることによって、父親がその他の育児を行う際も、スムーズに進められるという。
食事の際、子どもは食べ物を手でつかんだり、投げたりすることもある。そうした場合に備えて、汚れてもいい服を着用し、食べこぼしてもすぐに片付けられるよう、マットなどを準備しておくとよいという。「子どもは遊びながら食事の楽しさを学んでいく。汚したからといって怒らず、正しい食べ方を優しく教えてやってください」
村上理事は入浴の世話も推奨している。浴室はリビングルームなどと違って、テレビなどが置かれていないため、子どもとしっかりコミュニケーションを取ることができるからだ。「父親は母親に比べると、どうしてもスキンシップが少なくなりがち。裸の付き合いによって子どもとの親密度が増すだけでなく、母親が1人でリラックスして入浴する時間を与えることもできます」
子どもと外で遊んで汗をかいたら、帰宅後そのまま入浴するのも自然な流れになる。浴室では、子どもは転倒したり、溺れたりする恐れがあるので、たとえ短時間でも目を離さないようにすることが重要だ。
間接的に育児に関わることもできる。たとえば、離乳食の準備もその一つ。帰宅時間が遅い父親も、早起きして準備をしておくことができる。また、保育園などに子どもを預けている場合、子どもが体調不良になったとき、園からの連絡先を父親に設定しておくのもいい。自分が迎えに行けない場合でも、誰が迎えに行くのかを司令塔として差配することも、間接的な育児といえる。
村上理事は「母親が負担に感じていることを積極的に担ってほしい。育児は『手伝う』のではなく、父親としてやるべきことであると認識して、しっかりと妻と話し合って役割分担をしてほしい」と呼びかけている。
夫の育児時間 妻の2割
総務省が昨年発表した「社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもを持つ夫の育児時間は、2016年は1日あたりわずか49分。1996年の18分よりは31分増加したものの、妻の3時間45分と比べ約2割に過ぎない。
育児・家事関連全体をみても、夫は1日に1時間23分と、妻の7時間34分の2割弱。夫婦間には相変わらず大きな隔たりがあるのが現状だ。
日本の夫の育児や家事にかける時間は、国際的にみても短い。内閣府の少子化社会対策白書(2018年版)によると、夫の1日の育児・家事関連時間は、米国は3時間10分、ドイツは3時間、イギリスは2時間46分となっている。
日本の夫の育児時間は近年、増加傾向にあるとはいえ、他の主要国の水準にはまだまだ達していない。日本は育児、家事ともに妻が負担を強いられており、共働きが進む中で、大きな課題とされている。
この連載は、生活部・福島憲佑、加藤亮が担当しました。
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。